私のプロフィール 『百万人の英語』で聴いた音楽

 十代から二十代前半の頃の私は、ラジオを聴きながら何か別のことをしていたことが多かったようです。その中でも、文化放送の夜遅くやっていた『百万人の英語』は旺文社の提供で、番組のオープニングがハイドンの『時計』第二楽章で始まる興味引かれる番組でした。
 若い頃の私は、特に英語が好きだったというわけでもありませんでした。高校受験を控えた中学三年の夏休みなどは、NHKラジオ第二放送の英語講座で、英語の歌のコーナーばかりを聴いていました。アメリカやイギリスの民謡や童謡をそのコーナーでよく聴きました。特に、マザーグースの歌のほとんどは、キャロライン洋子さんが歌っていました。"London Bridge is Falling Down"とか"Pussy Cat"とかを覚えました。
 ですから、『百万人の英語』を聴いていた頃も、英語の流行歌とその日本語訳とか、日本の歌謡曲とその英訳とかのコーナーを好んで聴いていました。例えば、ビートルズの"Please Please Me"や、カーペンターズの"Please Mr. Postman"、エルビス・プレスリーの"Love Me Tender"などの回を聴いたことがありました。日本の歌謡曲では、野口五郎さんの『甘い生活』で、「あなたと揃いのモーニングカップは/そのまま誰かにあげよか」は英訳するとこれこれの英語表現になる、ということをラジオで聴いていました。
 それらの番組をラジオで聴いていた、と言っても、私の場合はほとんど聞き流していたので、それ自体は私の身に付いていなかったと思います。ほとんどどんな訳だったか、私は覚えていません。
 けれども、この英語の歌は、どんなことを歌っているのだろう、とか、どんな言葉のテクニックで歌詞や曲のリズムが出来ているのだろう、といったことへの興味の入り口を学べたと思います。また、歌謡曲という私たちにとって身近でポピュラーな題材の内容を英語にする時、どこにポイントを置いたならば英語としておかしくない文に表現できるのか、ということへの興味の第一歩を学べたと思います。
 もちろん、こうした数少ない番組コーナーで全てを学べたわけではなく、何らかの別の機会があった時に先に学んだことが生きて、その積み重ねをしていくことが大切なのだと思いました。ただその場だけで楽しくて、そこだけで終わってしまうのではなくて、そこで学んだことが、いつか別の場所で別の形で生きてくることが、一番大切なことなのだと思いました。