『ノンマルトの使者』を再評価する

 以前、ウルトラセブンの『ノンマルトの使者』において「キリヤマ隊長の判断は正しかったのか?」というブログ記事を書きました。彼の判断の是非を議論していると、らちが明きそうにないので、今回のブログ記事は、もう少し違った視点から述べてみようと思いました。
 ウルトラセブン第42話『ノンマルトの使者』を、私は子供の頃にオンエアで観ていました。この番組のいつものパターンとして、宇宙人が、連れて来た怪獣を地球上で暴れさせて、地球を侵略しようとします。すると、地球防衛軍の極東支部にある『ウルトラ警備隊』が、地球を守るために宇宙人や怪獣を武力攻撃します。多くの場合、隊員の彼らがピンチに立たされると、M78星雲からやって来て地球に潜入していたウルトラセブンが現れて、宇宙人や怪獣を倒してくれます。今回の『ノンマルトの使者』も、武力強化された改造潜水艦で攻撃してくる宇宙人や、巨大な蛸みたいな怪獣が出てきて、海洋へ進出して開発を進める地球人に攻撃を仕掛けてきました。ところが、モロボシダンやアンヌ隊員を前にして、海辺で現れた正体不明の少年が、ノンマルトの側に味方した発言をしてきます。私は、「何とも不思議な話だな。」と子供心に思いました。
 今、このエピソードを考えてみると、その少年の言っていたことは、本当だったのか、それともウソだったのか、ということが問題になります。本当だったとするならば、「ノンマルトは地球の原住民で、現在の地球人が侵略者だった。」ということになります。逆に、ウソだったとするならば、「ノンマルトが、その少年の魂を地球侵略のための情報戦に利用した。」ということになります。しかし、残念なことに、キリヤマ隊長の即断で、ノンマルトの海底都市が殲滅(せんめつ)されてしまった以上、その真偽は確かめられなくなってしまいます。
 しかしながら、それですべてが完結したというわけにはいきません。それで、視聴者たる私たちの心に何が残るのか、ということが大切だと思います。毎週、このテレビドラマで私は「悪い宇宙人や怪獣によって地球が侵略される」ことを、当たり前のことのように観ていました。しかし、そのうちに、「侵略されるばかりだと思っていた地球人が、実は、侵略する側になってしまっているかもしれない。」という懸念が、不意に頭をもたげてきました。
 最近の出来事で置き換えるならば、地球人→イスラエル人、ノンマルト→パレスチナ人、ウルトラ警備隊→イスラエル軍、ノンマルトの海底都市→ガザ地区、怪獣や改造潜水艦→ハマス、というような図式も成り立つかもしれません。ガザ地区を含むイスラエルの領土で近年どのようなことが起きているのか、という克明な記録が必要とされていることが、これからの我われ人類にとっては重要なことと言えると思います。もっとも、こんなことを考えているようでは、欧米のなだたる大学などの入試に挑戦しようとしても、失敗することが目に見えています。でも、それでも、それ以前に、私たちは、まともな人間でなくてはなりません。欧米人と無理やり肩など並べなくてもいいのです。つまり、私が思うに、この『ノンマルトの使者』のような映像コンテンツを知っている日本人は、それだけでも自らが世界に誇れる存在だと言えます。