キリヤマ隊長の判断は本当に正しかったのか?

 ウルトラセブン第42話『ノンマルトの使者』は、ネットでも話題になっている作品の一つです。その作品のテーマに私たちは考えさせられます。毎週、宇宙からの侵略者を迎え撃つウルトラ警備隊の面々が、地球の海底でノンマルトの海底都市を発見します。(その間、正義のヒーローのウルトラセブンは、海上で蛸みたいな怪獣と戦っている最中でした。)
 「もし宇宙人の侵略基地だとしたら、放っておくわけにはいかん。我々人間より先に地球人がいたなんて…。いかん。そんな馬鹿な。やっぱり攻撃だ!」とキリヤマ隊長は考え判断して、海底ミサイルを多量に投入して、その海底都市を壊滅させてしまいました。その直後、キリヤマ隊長はこのようにアナウンスします。「ウルトラ警備隊全員に告ぐ。ノンマルトの海底都市は完全に粉砕した。我々の勝利だ!海底も我々人間のものだ。これで再び海底開発の邪魔をする者はいないだろう。」ノンマルトの味方をするナゾの少年と直接出会ったことのあるアンヌ隊員は、その隊長の言葉を聞いて、少し微妙な表情をしていました。
 敵が消滅した安堵感と共に、本当にこれで正しかったのかという、正義に対する小さな疑念が、オンエア視聴者の子供の一人である私にも伝わってきました。正義のためだから仕方がない、というのが私たち人間側の真実なのです。そのテレビ映像シーンのBGMも、人類に対する危機感が鳴り止まないという音楽でした。(でも、悲観することはありません。その残酷さに、誰しもじきに慣れてしまいます。)
 この番組の最後のシーンやナレーションにもあるように、そのナゾの少年の魂は、ノンマルトからの使いとなるべく、海のような広い心を持っていたのかもしれません。また、ノンマルトが地球の先住民で、人間がその侵略者だったのかどうかは、すべてが消滅してしまったために永遠のナゾとなってしまいました。つまり、キリヤマ隊長の判断は、地球防衛という正義のためには正しかったと言えます。しかし、それに反対する別の正義に対しては、間違っていたと言えます。そうしたことは、人間と人間の間でも、その正義と別の正義の間でも、起こり得ていることです。
 この作品を観て思うことは、普段の私たちが、何の疑念も抱かずに、平和だ正義だと口をそろえて言っていることです。戦争のない事なかれ主義が平和なのか。本当に何も悪いことをしないのが正義なのか。否。それは、余りに現実離れした『机上の空論』になってはいまいか。などと考えて、疑ってしまう私の今日このごろです。本当は『平和』って何なのか、そして『正義』って一体何なのか、これを機会に考えてみたらいいかもしれません。