『本体2500円+税』の出会いについて

 『出会い』などと書くと、恋愛ドラマのように、私が誰か素敵な女性と出会ったように思われるかもしれません。しかし、そうではありません。それでは、『本体2500円+税』とは何かと申しますと、それは去年か一昨年か(注・どちらか忘れてしまいました。)に私が本屋さんで買った『生物基礎・生物』の学習参考書の定価です。
 今回取りあげるのは、受験シーズンが近づいて、受験生の入試についての話題がメディアでもちらほら出てきている今日このごろにぴったりなのかもしれません。私が今時分になって買ったその参考書には、「国公立・難関私大受験」という文字が、その本のタイトルのすぐ上に掲げられています。おそらく、医学部などの難関学部のある大学を受験しようとして、その試験科目に『生物』を選択しようとしている受験生が、このような参考書を買って猛勉強しているのだと思います。通常は、そのような試験勉強のために、すなわち、難関大学の入試に合格して、エリートになるために役立つことが、この学習参考書の本来の目的です。
 だから、現在受験生でもない私が、このような本を買うことは、普通はありえないことだったのです。しかし、私には、そのような本を買わなければならない切実な理由がありました。テレビやネットなどのメディアで、専門家さんやお医者さんや一般の人々に使われている用語の多くの意味内容が、具体的によくわからなくなってきていたのです。このコロナ禍で、それは、ある意味で必然の結果でした。
 ウィルスって、コロナって、PCRって、mRNAって、ゲノムって、変異株って、抗原って、抗体って、ワクチンって、アナフィラキシーって、何なのか。そもそも、ヒトの免疫機能って、どういうものなのか。ここ1、2年の間にメディアを通じていろんな人の話を聞いて知識や情報を吸収すればするほど、私には何が何だかわからなくなってきていたのです。
 そこで、私は地元の本屋さんで、『生物』に関する学習参考書を手にとってみました。その巻末の索引をぱらぱらとめくってみたのが、そもそものきっかけでした。PCRとかファージとかいった言葉は、私自身のこれまでの理解では意味があやふやでした。そうした意味の言葉を見つけて、その説明と図解のページを開いてみると、基礎的なことから高度な内容まで書かれていました。それは、知識の吸収であると同時に、メディアで見聞きしたことへの科学知識的な裏づけや、すり合わせでもあったわけです。
 その定価『本体2500円+税』の『生物』学習参考書に記述されている知識の内容は、高校時代に私が『生物』の授業で学んだ教科書的な内容と比べると、はるかに広範囲で詳しい知識や情報だということがわかりました。もちろん、まだ、私は、そのほとんどを読めていません。目次や索引で、その時々で理解が必要な用語だけを探しています。つまり、辞書のように言葉を引いて、利用しています。その折に、別の関連知識や、より広い見識も参考にできるので、私としては勉強になります。
 例えば、『B細胞』について調べようとすると、抗体や、T細胞や、サイトカインや、抗原提示や、プラズマ細胞や、抗原抗体反応や、マクロファージや樹状細胞等々と関連があることがわかります。それらは、体液性免疫のしくみとして一(ひと)くくりにできます。そして、それは獲得免疫(あるいは適応免疫)の一種であり、さらに生体防御という「ウィルスや細菌などの病原体から体を守るしくみ」の段階の一つであることもわかります。(私による、このようなまとめかたは乱暴で雑なのかもしれません。一方、その参考書を実際に読んでみると、ちゃんと知識を体系づけて書かれています。私のまとめかたが下手なだけだということを、一応ここで、誤解がないように断わっておきます。)
 また、現在の私の本業との関係もあって、植物の光合成や、病害虫や微生物などの知識や、遺伝子と関連している作物の品種改良や、天候不順から影響を受けている生態系の変化等々、生物学的に関連する知識や情報を、日々知っておく必要に迫られています。それだけではありませんが、現時点で知られている自然科学的な知識や情報に、私は無関心ではいられません。実際には、反省ばかりなのですが、もっと科学的知識を学んで、かつ科学的に考えていかないといけない、というふうに私自身の士気を高める毎日が続いています。