最近私が気になるアニソン主題歌

 私がそのアニソン主題歌に興味を持ったのは、三宅裕司のえびぞり巨匠天国で秋田大学アニメーション製作研究会の『農耕士コンバイン』を拝見したのがきっかけでした。かなり昔だったので、『機動戦士ガンダム』よりも前のアニメ作品の主題歌だったように勘違いしてました。しかし、ネットで調べてみてわかったことですが、『機動戦士ガンダム』の約2年後に、『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』『起動戦士Zガンダム』の順番に放映されていました。
 『重戦機エルガイム』が放映されていた頃は、私は23か24歳の若い頃でコンピュータ・プログラマの仕事をやっていました。そのオープニング主題歌の中で「確かなものが、何にも無いね。」と歌われていました。あの頃もそうだったし、今もそうだな、というのが、皮肉にも確かなことのようです。正確には「確からしい」と言うべきでしょう。
 現実には、どんなに科学的で客観的な知識でも、私たちの心や感情を介してしまうと、その「確からしさ」を失くしてしまうようです。ところが、その一方で、科学や法律などの効果に期待しがちなのも、私たちの心や感情のようです。私たち人間は、そのような矛盾を心の内にかかえたまま、それを自問自答して生きていかなくてはなりません。
 さて、今回のテーマにしたいは、その『重戦機エルガイム』のオープニング主題歌はさておくとして、えび天の『農耕士コンバイン』でパロディー化されたおおもとの『聖戦士ダンバイン』のオープニング主題歌についてです。YouTubeなどで、そのアニメのダイジェスト映像とか、mioさん(現miqさん)のライブ映像とかを観ながら、そのオリジナルがパロディーの数倍面白いことを確認しました。地元のレンタルビデオ屋さんにも、本編がDVDで全9巻あったので、最近はそのレンタルビデオの1、2巻ずつを借りて観ています。
 ずばり、私がそのアニソン主題歌の何に興味を持ったのかと申しますと、そのスタイリッシュ性です。それを『戦闘メカ ザブングル』あたりから少しずつ私は感じていました。そうした富野監督作品のアニメ主題歌の曲調や歌詞には、ある意味でオシャレな感じがしました。その『ダンバインとぶ』に関しても、音楽がオシャレで(ちょっと、ほめすぎかもしれませんが)レトロで子供にもわかりやすいかと思えば、チクチクしたトゲがあって大人の鑑賞に耐えうるようにもなっていると思いました。
 特に、2番の歌詞では「オーラロードをつらぬいて 風にまぎれて来る奴が オーラの力 忘れてか 憎しみ燃やし 火を放つ」などとあります。そういう奴らに戦いを挑むのがダンバインなのですが、そういう奴らの姿に、昨今の自粛警察とかSNSの非ぼう中傷とか世間の冷たい風評被害とかとイメージが重なるところがあります。そういうふうに、得体のしれない悪を具象化すると、スッキリします。そのことが、私には痛快に思えたのです。
 しかも、それだけでは終わりません。正義の味方のダンバイン側が「殺し合うのが正義でないと 知って闘う戦場だけど」と自省とも言える素直な思いを吐露するところがカッコイイのです。現実の世界で生きている私たちの一人一人は、それがなかなかできません。不満だらけで、自らを省みず、他人を非難ばかりしています。
 しかし、そのような困難さに歯がゆさを感じているのは、私だけではないはずです。mioさんの、ネットのライブ映像は過去のものでしかありませんが、そこから何かの希望をもらうことは各人の自由だと思います。すると、私は不思議なことに気がつきました。『自由』と『自粛』は、本当に相反する意味の言葉なのか、という疑問です。どちらも、自らの判断で動いて結果が得られるものだとすると、その判断の違いに是非がありそうです。それだけのことだと考えるならば、『自由』と『自粛』との間には、普段の私たちが意識しているほどの差異はないのかもしれません。ひょっとすると、その差はほんの紙一重でしかないのかもしれません。私たち一人一人が本当は何を恐れているのか、自問自答してみる必要がありそうです。
 それに、私がこのアニソン主題歌が気になって、はまった理由も、少しずつ見えてきました。都会で緊急事態宣言が出ているこの時期に、こんな話は不謹慎ではないかと言う人がSNSにはいらっしゃるかもしれません。しかし、それは、とんだお門(かど)違いです。緊急事態宣言が出てしまったからには、これは有事であり、『助からない命』に私たちの日常は嫌でも直面しなければならなくなります。もし仮に殺し合いが正義ではなかったとしても、それでもその厳しい現実を認めて生きていくしかなく、それに対する覚悟が必要になります。緊急事態宣言にピンとこない、と言う人は、残念ながら間違いです。今はピンと来なくても、真綿で首を絞められていることは、いずれわかります。わかってから後悔するよりも、このようなジャンルのアニソンでも聴いて、少しでも早く、私たち自身が置かれている現状を本当に理解していただきたいと、私は思っています。
 それ以上の理由については、あえてここでは申し上げられません。その理由および答えについては、皆さん一人一人に課せられた、期限のない宿題といたしましょう。