目のつけどころがちょっと変かもしれませんが…

 私が時々テレビで注目している番組の一つに、Eテレの『昔話法廷』があります。誰もがあらすじ内容を知っている国内外の昔話を題材にして、ちょっと変わった裁判が法廷で開かれるという番組内容です。通常放送される時間帯から推測されるように、法廷で行われる裁判が具体的にどのように行われるのかを、主に子供の視聴者に学んでもらうための教育番組だと思います。裁判員制度の導入で、一般の人々の裁判への関わりが増しつつある昨今の情況も踏まえて、子供たちにもその進行手続きをわかりやすく紹介している、というのがこの番組の特徴です。
 各回の俳優さんが意外と豪華な感じがして、この番組を注目している人も多いと思います。私個人の意見としては、各回に出演する昆虫や動物などの『かぶり物』がよく出来ていて、毎回感心しています。その見た目のリアルな完成度は、子供だましの域を超えていると私は感じています。例えば、ブタでもオオカミでもイヌでもサルでもウサギでもカニでもアリでもキリギリスでも、その『かぶり物』がリアルであると同時に綺麗です。この番組の内容そっちのけで、その『かぶり物』を観ているだけでも、心が癒される感じがするくらいです。もっとも、裁判で意外な事実が明かされたりして、この番組のシリアスなドラマに引き戻されます。その『かぶり物』の下に隠されていた人間的な意思や心が怖くなってしまうことも、私にとっては事実でした。
 裁判の進行手続き云々を、あえて私が強調したことにはそれなりのわけがあります。昔話の現代的解釈が、この番組の目的だと勘違いしてしまうと、視聴者は感情的になってしまう危険があるためです。「こんなこと、昔話に書いてないじゃないか。」と大人の側で反感や違和感を生んでしまうこともあると思います。逆に、「昔話は残酷すぎるし、現代では不適切だから、排除すべきだ。」という率直な意見も出てくると思います。どちらもそうではなくて、物語に起承転結があるように、法廷ではどのような順序立てで話し合いが進められるのかを理解することが重要だと思います。視聴者は、昔話のアレンジに感情的になるのではなくて、裁判の公平な進め方をこの番組からしっかりと学んでいけると、当番組の有益性が増すと思いました。