頑張っている誰かのために書きます

 こんなことを書いたら、炎上まではしないかもしれませんが、勝手すぎる、あるいは、ムードぶち壊しだとお叱りを受けるかもしれません。でも、あえて書かせていただきます。オリンピックの聖火リレーが始まったものの、何か社会的なメッセージの発信が足りないような気がします。その証拠に、私がテレビのニュースで観たかぎりでは、一部沿道へ集まる人々の『密』があるようです。そのことに関して、聖火リレーのランナー側が無関心のような気が多少してならないのです。この際、スポーツ選手の側が、誰に忖度する必要もなく自己主張していいと思います。なぜならば、大人の一人として、社会全体のことも気になっていると思うからです。
 つまり、人目をそんなに気にせずに、自己表現していいと思います。こんなことをしたら恥ずかしいと思うかもしれませんが、もしも私が聖火ランナーの一人だとしたならば、(ややオリンピック憲章違反に引っかかるかもしれませんが)ユニホームやたすきなどの目につくところに「『密』に気をつけて」とか「ステイホーム頑張って」とか「マスクの励行」とか「テレビで観戦」とかの社会的メッセージをかかげて走らせていただくと思います。それは、今の社会全体を思いやっての、お金のかからない慈善行為みたいなもので、何らかの働きかけとなると思います。同時に、世界に対して「日本人はこういう主張や方針で生きているんだ。」というアピールになると思います。今だからこそ、このような情報発信が必要なのです。
 現在私の住んでいる長野県では、聖火リレーのために交通規制をします、というテレビCMが度々流されています。交通規制をするということは、多くの警察官が沿道に出て監視をするということです。決して路上の人々を野放しにするわけではありません。野次馬が多ければ、沿道の交通整理のついでに注意されることがたやすく予想されます。だから、私は聖火リレーのイベントを沿道には見に行きません。地元のそのような現状は、日本国内ではごく当たり前に思われていることかもしれませんが、世界にあまりその気持ちが伝わっていないのは残念なことです。日本人が得体の知れない熱(フィーバー)に浮かされていて大人げないと海外メディアなどから誤解されるのは、悔しいことだと思います。
 私がこのようなメッセージのアイデアを思いついたのは、最近『帰ってきたヒトラー』というレンタルDVDを観たからです。今回は、そのドイツ映画の内容を詳しく申し上げられませんが、簡単に説明いたします。現代にタイムスリップしたヒトラー総統が、彼自身の物まね毒舌芸人として、ドイツ国民の心を鷲づかみにしてしまうというものでした。同名の風刺小説を映画化したもので、日本人の感覚で観ると少し心配になるような映画でしたが、いくつかのシーンには学ぶべきところがありました。
 そのシーンの一つに、飼い犬を買いに行って、言うことを聞かずに噛みついてきた犬を、ヒトラー総統が銃殺するというシーンがありました。彼がテレビやネットで超人気者になることをこころよく思わない放送マンの策略で、番組の生放送中に、何故かその映像が流されます。すると、その残虐性がみんなに伝わって、テレビ出演を含めたメディア露出が全部なくなって、彼は失職します。そんな彼が復職するためにとった方策は、真摯な謹慎生活と、動物保護団体への謝罪と寄付でした。ドイツ国民は、彼が本当のヒトラー総統だとは知りませんから、彼は見事に彼自身の物まね毒舌芸人としてメディアに復帰を果たします。
 そのような彼の悪魔性に見習えとは申しませんが、他者からの悪評を何とかくつがえす努力をするということは、これからの日本人が世界にアピールする上で最も重要なことだと思いました。「言わなくてもわかってもらえる。」「沈黙は金(きん)だ。」というのは損だということです。そのような意味では、「オリンピックや聖火リレーを中止にするべきだ。」という日本人の主張があったということには、多少救いがあったかもしれません。実は、そのように主張しても、世界からは全面的な共感が得られるとは思えませんが、アピールを日本人自身がしたという観点からは評価されると思います。もちろん、その反対に、「オリンピックや聖火リレーを進めるべきだ。」という日本人の主張もあってしかるべきだと思います。つまるところ、これは何かの『分断』なんかではなくて、『バランス』なのだと思います。テニスの大坂なおみ選手を真似する必要はありませんが、聖火ランナー等の日本人選手も、社会への謙虚さだけではなくて、積極的かつ社会的にアピールすることを目指していいのではないかと、私は思います。