気をつけよう!下り坂と夜の峠道

 今朝は、それほど雪は積もっていませんでした。5センチほどの積雪でした。けれども、夜中から物凄い嵐で、周囲の山々が、獣が吠えているかのように騒々しくて、私は何度も寝床から起こされました。朝になって明るくなってやっと風が止んだと思ったら、今度はどっさりと雪が降り出していました。
 夜中の強風で、畑に設置したブルーシートが飛んでいないか見に行きたかったのですが、雪の積もった道路で車が進めなかったり、事故を起こしては大変なので、家の外に出るのは止めておきました。その畑は、普通の天気だったならば、車で6、7分で行ける所にあるのですが、この降雪と積雪では、外の作業は困難、すなわち、無理だと判断しました。天気予報で正午までには雪は止むと聞いていたので、私は油断していました。もうお昼を過ぎているにもかかわらず、依然と大雪が降っています。
 畑でしなければならない作業のために、今年は早めに長野県に戻りました。ここ数日は、畑の草退治をしていました。地元の農家さんに聞いたところによると、春になって暖かくなってから草を刈ろうとすると、新しく根っこが張り出して、雑草を地面からはがすのが困難になるとのことです。冬のうちに、枯れ草の根っこを抜いておく必要がある、というわけです。昨年、畑の雑草の猛威に苦しめられたので、私は身にしみてそのことがわかっていました。
 具体的にどうしたらいいかは、私自身が考えました。まず、木の棒の先に三角形の鉄製の板がついた『三角ホ―』という草刈り鎌で、土の表面を削るように枯れ草を刈ります。そこまでは、通常の草刈りと同じです。けれども、冬の枯れ草を土の表面を削るように刈ると、地面の中の細かい根っこが付いてきます。いわゆる「根こそぎ」抜けてくるというやつです。今年の暖冬も手伝って、畑の土がそれほど凍みていないので(朝夕は、多少凍みますが…)、意外と簡単にそれができました。ただ、畑全体が、10アールもあるため、手作業は時間がかかることを承知していなければなりませんでした。一方、機械では、どうしてもお金がかかります。それに、地面の表面だけを削るとか、雑草の根の張りのひどい部分を、集中的にていねいに処理することは不可能に近いと思います。よって、手作業ででも地道にやっていけば、一週間前後でできるという予定を立ててみました。また、枯れ草や枯れ枝は、『アメリカン・レーキ』という鉄製の熊手(くまで)で、土と分離しながら、掻(か)き集めることができます。つまり、草退治が、その熊手と草刈り鎌の二つの農具だけで出来る作業だということが、私にはわかりました。それで、ここ2、3日ほど、畑でその草退治を私はやっていたわけです。
 その2日目と3日目である一昨日と昨日は、土曜日と日曜日ではありましたが、畑のそばを走っている道路が、いつもより静かであることに気がつきました。実は、去年から感じていたのですが、平日と土日に関わらず、地元の道路の車の往来が以前よりも激しくなりました。北陸新幹線の開通によって、人の行き来が多くなったのに合わせて、物資のトラック輸送も増えたようです。また、ガソリンの価格が下がったことによって、車を利用する人が増えたことも、交通が激しくなった原因のようでした。ところが、ここ二日間は、車の往来が、気のせいか少ないように感じられたのです。
 おそらく、先日、軽井沢で起きたスキーバスの事故が影響しているのだと思いました。あれだけ全国的なニュースになってしまうと、それを知らない人の方が珍しいと言えましょう。長野県軽井沢の碓氷峠の峠道(碓氷バイパス)で起きた交通事故として、多数の死傷者が出てしまったので、ニュースや情報番組で大きく取り上げられていました。専門家を交えて、いろいろな原因究明がなされていました。(当然、長野県警で、事故の調査や原因究明が、現在も進められていると思います。)
 それとは別に、私のことを話しましょう。私は、テレビでそれを観て、他人事(ひとごと)には思えませんでした。なぜならば、私は、10年前までは長野県外の人間でしたし、現在では軽トラで地元の生活道路を運転して『下り坂』を注意して通っている人間だからです。
 実際、『下り坂』でスピードを出して、対向車と接触事故を起こしてしまったことがありました。対向車を運転していたオバさんと、地元の上田警察署へ交通事故の届けを出しに行きました。その時に、事故を起こした状況を係の警察官の人に説明して、車体の破損状況を見てもらいました。双方の運転席側のドアが破損したものの、私も相手もケガが無かったことが、不幸中の幸いでした。しかし、大事なことは、事故の状況を説明することで、私が『下り坂』で車をコントロールできなくなって、車が道をふさぐように横向きになってしまった原因が明らかになったことでした。係の警察官の人の言葉ですが「スピードの出し過ぎには注意しなくてはいけない。」ということでした。私も相手も、朝の出勤のために急いでいたために、車をすぐには止められないスピードを出してしまっていたのです。知らず知らず下り坂でスピードを出してしまった私に過失はあったものの、上り坂を突っ切ろうとしてスピードを落とさなかった相手に全く責任が無かった、とは言えないのだそうです。事実、過失のあった私の軽トラのドアの方が、相手方の車よりも、ひどくぐちゃぐちゃに壊れていました。ちょっと間違えば、過失のあった私のほうが命を失っていたかもしれません。
 この事故があって、私は、前よりもまして車の運転に慎重になりました。相手の迷惑になったことを反省したことは言うまでもありません。けれども、私自身の命を危険にさらしたことには、もっと大きな反省がありました。当時私は40代後半でしたが、車の免許を取得したのは、30代になってからでした。車の運転技術が未熟だからだ、と周囲からは言われました。運転技術の熟練(あるいは慣れ)と年齢は一致しないことを、私は知りました。
 そして、慌(あわ)てたり、イライラしたり、していると、車の運転を誤って、スピードを出しすぎてしまいがちであり、特に下り坂ではスピードが出てしまう、ということを知りました。また、一度スピードを出してしまうと、下り坂でそれを減速することが難しいということも知りました。スピードを出す前に、スピードを出さないように、変速ギアを減速する(エンジンブレーキを効かせる)とか、ブレーキをあらかじめ踏んでおくとかしていないと、(どんなになだらかな下り坂であっても)下り坂をゆっくりと安全に降りることはできないのです。
 ところで、私には夜の峠道を車で運転した経験もあります。今から10年ほど前、私は小諸にある長野県農業大学校で、新規就農を目指す研修生でした。私より10歳下の男性(茨城県出身)が、私より半年先に研修に入ったので先輩でした。その先輩の車(オートマのRV車)で、彼と二人で松本へ研修に行った帰り道のことです。彼は、わき腹を抱えて私にこう言いました。「俺、急に腹が痛くなったんで、運転を代わってくれ。俺がこのまま運転すると、事故を起こしそうなんだ。」そこで、私が、運転を代わったのですが、もちろんそのオートマのRV車の運転は初めてでした。しかも、どの道を通って行けば帰れるのかまったくわかりませんでした。すると、彼は「俺が行く道を指示するから、そのとおりに運転してくれ。」と言ってきました。そこで、私は、「その角を右に曲がって」とか「その左の道を、道なりに行って」という彼の指示に従って運転することになりました。ところが、夜であたりが真っ暗で、どこがどう道がつながっているのかもわからず、他(ほか)の車の明かりも全く見えない場所を走るはめとなりました。
 ただ、助手席の、私より10歳下の先輩は、腹が痛いというよりも、少し眠たそうだったので、私が運転した方が安全なような気がしました。彼が道の指示を躊躇していると、車のスピードを緩めて、私の方から「どっちの道を進むのですか。」と聞きながら、ゆっくり車を運転しました。実は、松本から、私の全く知らない険しい峠道を走っていたことを後から知りました。その峠道は、少し雪が降っただけで通行止めになるくらい道路の険しい、でこぼこ道であったことを後から知りました。車の運転を任された私としては、あたりが真っ暗でほとんど何も見えず、先輩の指示なしには、まったく車を進めることができなかったのです。つまり、視界が狭くて、全くスピードが出せなかったのです。それが幸いして、無事に小諸の長野県農業大学校の寮に帰ることができました。
 話を戻しますが、車の運転で『下り坂』と『夜の峠道』には、気をつける必要があると思います。私は、上田警察署や長野県警からの回し者ではありませんが、最近増加しつつある、車で長野県を通過する人や、車で長野県に入る人に、これを機会に、是非とも約束していただきたいことがあります。長野県内で車を運転している最中では、決して焦ったり、イライラしたりしない、と約束してください。誰も見ていない場所でスピードを出しすぎたり、無理な追い越しや、前を走っている車に警笛を鳴らしてプレッシャーをかけたりしないで欲しいと思います。
 「長野県の地元のドライバーは鈍感でトロい。」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。それだけ道路が危険であるということがわかっていて、事故を起こさないように車の運転に慎重になっているのです。私も、県外から来た当時は、それがわかりませんでした。運転中にイライラしたこともあります。けれども、それは何の得にもならないと、いずれわかります。しつこいかもしれませんが、もう一度だけ言わせてください。長野県の道路を車で通る人には、慎重な運転をお願いします。