東京で雪かきをする

 昨日の雪が大降りだったため、今頃には珍しく東京でも積雪がありました。私の実家の前に、都バスの停車場がある関係で、昨晩はスコップで車道の雪を誰かが削って除(の)けている音がしました。朝になってみると、天気が良くなって、そこそこに日が射していました。けれども、積もった白い雪が、歩道の白線を覆い隠して、車道に入り込んでいたため、人や車が通れる道幅が狭くなっていました。私の実家の前を通行する人は、今朝の寒さで凍結した積雪の上は、滑って歩きにくいと判断して、車道の上を歩いていました。ちょっと危険に見えましたが、車と人がほとんど同じ場所を通って行くのがわかりました。
 私は、母に実家の前の雪かきをしたいと申し出て、実家に備えてあった長靴と軍手と平型スコップを借りました。私の東京の実家の道路に面した間口は、元は町工場の作業場と事務所の表口で入り口だったため、15メートル以上の広さがありました。雪の積もり具合から判断して、まず、家への玄関口に続く場所と郵便受けにたどり着ける場所の積雪を除いて、その通路を確保しました。次に、隣近所の境界となる場所から道路に沿って、歩道の白線が見えなくなっている箇所の積雪を平型スコップで家側に除けていきました。雪を除いて歩道の白線が見えてくると、車が来たときに通行人が避けることのできるスペースができると思ったからです。私の実家は東向きのため、午前中に家側に雪をかいて除いておけば、それは日射しの熱で幾分融けてくれて、水になって流れてくれるだろうと考えました。また、歩道の脇の側溝(そっこう)の穴にその水が流れやすいように、その場所の積雪を除きました。
 長野県上田市は、雪が他の地域と比較して少ない地域ですが、朝夕だけでなく日中も寒い日が続いて、降った雪が融けずに積雪が増えることがよくあります。地元のホームセンターにその時期に行くと、手押し式の除雪機や、広口のバケットや、平型スコップなどが必ず売られています。10センチくらい積雪があると、それらの器具で必ず誰かが雪かきをして、人や車の通り道を確保しています。そうしないと、必ず翌朝は道全体が凍結して、人や車がスリップしてしまうからです。人の通り道だけならば、肩幅くらいだけ雪が除けられていても十分なのです。
 ところが、私が東京で今回の積雪の様子を実家の近くで実際に見たり、テレビのニュースで見たりしたところ、積雪のどこも除雪されていない場所を人が歩いて、滑って転んだりしていました。この世には、積雪に慣れていない、積雪になったら人の歩ける道を最低限確保することを知らない人も少なくないのだな、と私はちょっとだけ思いました。