"The way we were"の日本語カバーに挑戦!

 以前、私は二十歳くらいの頃に、八神純子さんの歌を聴いていた、と書きました。実は、その頃、『JUNKO THE BEST』というLPレコードを買っていました。それには、八神純子さんのデビュー曲から最新作の『パープルタウン 〜 You oughta know by now 〜』までが収録されていました。そのほかに、『うまくいかなくても』や『愛色の季節』というオリジナル曲も収録されています。それらの曲は、現在YouTube動画サイトを探すと聴けますが、音が綺麗だな、と私は勝手に思っています。さすが、当時の『世界のYAMAHA』の楽器で演奏されているせいかな、と私は勝手に思っていました。
 それは兎も角、当時私は、八神純子さんのいわゆるタレント本も買って読んでいました。それによると、八神純子さんが最も大好きで尊敬する女性ヴォーカリストは、あのバーブラ・ストライサンドさん(以下、「バーブラさん」と略記します。)だと語られていました。
 そう言えば、バーブラさん歌唱の"The way we were"の歌詞の中には、"Misty watercolor memories"とか"Memories may be beautiful and yet"とか"What's too painful to remember"などとあります。偶然かもしれませんが、八神純子さんの曲にも、『水色の雨』や『思い出は美しすぎて』というタイトルがつけられています。しかも、「思い出は美しすぎて/それは悲しいほどに」という歌詞のフレーズさえあります。私の解釈では、八神純子さんがそれほどまでにバーブラさんに傾倒されていたということの、それらは証拠ではなかったかと思っています。
 ところで、"The way we were"という曲のタイトルは、良い意味で女性に好まれるタイトルだと思います。その一方、フランク・シナトラさんの"My way"は、男性に好まれる曲のタイトルと言えましょう。同じ『道』でも、"The way we were"は、女性的な愛情と感情がいっぱいつまった『道』を歌で表現していると言えましょう。この曲が美しいのは、曲そのもののバラードの美しさもさる事ながら、そうした内容の率直な表現から来る美しさにも因(よ)っていると言えましょう。
 そんなふうに、私の感想を先に言ってしまいました。さっそく、その日本語カバー曲を以下にお見せしましょう。


       『共にいたあの頃』


共に 心の隅に
淡く描いたような 思い出よ


散らばった 写真に残る
二人が交わしてた あの笑顔


いっそ割り切ってしまおうか
仕方ないことなのかな
やり直せたらいいのかな
教えてほしい…


過去は 美しいもの
何て つらいのかしら
断ち切るしかないけど…


楽しかったと
思ってましょう
いつになっても
思うわ… あの頃…



 この曲には、一般に『追憶』という日本語タイトルがついています。曲全体の内容を表した、良い日本語タイトルだと思います。私があえて日本語カバー曲のタイトルをつけたのは、歌い手が「何を」一番大切にしたいのかを明確にしたかっただけのことです。それは、「相手と共に生きて、笑顔でいられた『あの頃』の思い出」でした。そのことを思って、元気を出して、今を生きてゆきましょう、というメッセージが、男性の私にはちょっとうらやましい気がしました。
 ところで、"Can it be that it was all so simple then"(すべてそんなにシンプルだったとすることができるのか)とか"Or has time rewritten every line"(それとも、時にすべては書き換えられたのか)とか"If we had the chance to do it all again"(もう一度やり直せるチャンスがあったらいいのに)とかいうフレーズが続きます。それをそのように逐一直訳していくと、訳詞が曲の流れるスピードについていけなくなります。
 そこで、私は思い切って意訳して、「いっそ割り切ってしまおうか/仕方ないことなのかな/やり直せたらいいのかな」というふうな訳詞にしてみました。ただし、これは、私の翻訳の努力や才能と言うよりも、もっと違う私の特技か趣味のセンスと言ったほうがいいかもしれません。今回私は、もしもこの曲を八神純子さんが日本語で歌ったとしたらば、どんな言葉を使うかな、と想像しながら、訳詞を考えていました。
 バーブラさんをこの上なくリスペクト(尊敬)している八神純子さんのことですから、実際にそんなことをしてバーブラさん側から何か「いちゃもん」をつけられたら大変です。実際には、そんなことはできなかったわけです。そこで、代わりに私が、その日本語カバーをただの趣味としてやってみたというわけです。
 最後に、そのついでに出来た副産物として、そのような訳詞を八神純子さん風(?)に歌ってみたらどうなるかを、付録としてつけておきました。その場合、日本語の言葉のどの語尾をどう伸ばすか、ということにポイントを置いて見ていただくといいと思います。


【 今回の付録 】


とーもにー こころーの隅に
淡くぅーえーがぃたよーうなー 思いー出よー


散らばったー しゃしんーに残る
二人が交わしーてたー あのえがお


いっそー割りー切ってーしまおうかー
しかたーないーことなのかなー
やりー直せーたらいいのかな
教えてーほしーぃ…


かーこはー うつくーしいもの
なんて つらいのかーしらー
断ち切るしーかないーけどー


たーのーしかっーたと
おーもってまーしょ〜う
いーつーになーって〜もー
おもーうわー あのーこーろー