別人作曲問題を考える

 私の住んでいる地域でも、昨日未明から降り出した雪が大量に積もりました。今朝は日光が射すくらいお天気になりましたが、気温が低いために大量の積雪を見ることになりました。事前に長靴を用意することを忘れていたため、昨日は外に出ることもできませんでした。無理をして普通の靴で外出などしたら、足元が雪の寒さでかじかんでしまいます。勿論のこと、軽トラを運転することは危険です。ビニールハウスが積雪の重みで倒壊してしまったら大変なので、見に行って屋根にのぼって雪かきをしたいところですが、それもかなり危険です。結局、昨日一日、家にひきこもっていました。今日一日も、同じような危険回避の理由で、外出はできそうにありません。
 昨日テレビのニュースで、新幹線と航空旅客機の運休を知りました。この21世紀の現代に、最先端の輸送機関が雪なんかで運休するなんて信じられないと思う人がいらしたかもしれません。効率的な現代のテクノロジーが雪に弱いということ自体、信じられないと思う人がいらしたかもしれません。しかし、私はそうではないと思いました。タイヤおよび車輪で移動する機械はすべて、雪の上では滑りやすいのです。そんなこと、小学生だってわかることです。チェーンをタイヤに装着したり、塩化カルシウムを路上に撒いたり、スプリンクラーで路上を散水したりと、いろいろ対策はあるとは思いますが、それで100%スリップしないと確信してはいけないと思います。こんなことを言って、専門家の方々には申しわけないと思いますが、根本的な解決法は、大雪の日には、そうした輸送機関を利用しないことだと思います。それで仕事の流れが止まったら大変だと、ほとんどのビジネスマンは思うかもしれません。けれども、それが、災害や事故に遭わない最善策だと思いました。
 かなり話がスリップして、横道にそれてしまいました。本題に入りましょう。先日、作曲家のSさんにゴーストライターがいて、そのNさんの記者会見をテレビで観ました。Sさんが世間を欺いたことに関しては「私も共犯者です。」とNさんは言っていました。
 『別人作曲』というテレビのテロップを見て、私は一瞬ドキリとしていました。私自身、日本語や英語などの翻訳でカバー曲を勝手に作っています。確かに、それらは私とは別人の作曲なのです。けれども、『別人作曲』の言葉の意味合いが違うので、少し安心しました。私自身は、『別人作曲』をひた隠しにして、私が作った曲だと世間に偽って公表して、お金をもらっているわけではありません。あくまでも、趣味の範囲を超えない程度のものと気楽に考えております。
 NさんがSさんの『縁の下の力持ち』であったという関係は、会社で言えばありふれた関係だったと言えます。Sさんは実質上、作曲家ではなく音楽プロデューサーの役割をしていたと言えます。しかも、世間を欺いていたことは倫理的に良くなかったかもしれませんが、超一流(?)の営業マンの役割を果たしていたと思います。
 Nさんが記者会見で自らの正体を明らかにしたことについて、世間では売名行為だとかいろいろと言われています。しかし、「著作権は放棄したい」と彼が述べていることから、売名行為ではないことがわかります。そうした記者会見に出ること自体、彼は思いもよらない何らかの社会的制裁を受けてしまうかもしれません。それを覚悟で訴えたかったことがあったのだと思います。
 もしも私がNさんの立場であったならば、Sさんの言葉や図形などの指示命令で「ああしろ」「こうしろ」と言われることは、いやだったと思います。Nさん自身の言われる『好きな音楽』を続ける上で大きな障害になっていたはずです。そう考えてみると、Nさんというのは、ちょっと人がいい性格なのかもしれません。世間でスレていない感じがします。それと対照的に、Sさんは金に目がくらんでしまった感じがします。世間でスレているところが、営業マンとしての第一条件なのです。
 私も、社内でコンピュータの技術者兼オペレータをやっていた頃、同じ会社の営業マンと、客先で共同作業をしに行った経験が何度かありました。客先との会議や打ち合わせだけでなく、お客さんの実作業の手伝いをしたりしていました。その時、私が驚いたのは営業マンさんの実力でした。人手が足りないお客さんから「そのアクリルを切って。」と指示されると、彼は何の躊躇(ちゅうちょ)もせず文句も言わずに、お客さんの指示通りにアクリルを切っていました。営業マンの人は、それほどまでにお客さんの身になって、それで仕事の発注をもらっているのだな、と私は感心しました。世の中には、景気のことばかし考えていて、努力しない人が少なくありません。我が身を削ってまで仕事をしようとしている人が減りつつあります。その意味で、その営業マンの人は、私には立派に見えました。
 まだ、事実関係は十分に明らかにされていませんが、たとえSさんが「聴覚を全く失った」とウソをついていたとしても、Sさん一人を罪に問うのは間違いなのかもしれません。勿論、法的にはそういう曖昧さは許されないと考えられます。けれども、「罪を憎んで人を憎まず」を原則として、もしSさんがそれで世間を欺いたのであれば、こう考えるべきだと思います。世間を欺いたSさんの事例は、日本人が現実を直視する良い教訓となったのです。そう考えれば、私たち自身にも、いろんな反省が浮かび、以前よりも賢くなれて、前向きに人生を進められるのではないか、と思います。
 ところで、今回の問題では『別人作曲』のほかに『ゴーストライター』というキーワードがありました。テレビのニュースを見ながら、私は昔に映画館へ見に行った『ゴーストバスターズ』というアメリカ映画のテーマ曲を思い出しました。それで、「ゴースト、バスターズ!」と歌ってみたのですが、同じメロディーの調子で「ゴースト、ライター!」とやってみると、結構ノリがいいことを発見してしまいました。(ちなみに、絶対音感は必要ありません。誰にでもできます。)これと同じパターンで、「スピーチ、ライター!」とか「ゲーキ、サッカー!(劇作家?)」とかやってみると楽しめると思いました。今回の問題でショックを受けた人もいらっしゃるでしょうが、そうやって軽く笑い飛ばしてしまうのも一つの対処法なのかもしれません。