私のプロフィール はしかと水疱そう

 先日は、私の誕生日で、満五十三歳になりました。しかし、私の場合は、この年になっても、それほど良くも悪くも考えることはないようです。私より年配の人を見て、あと何十年くらいしか私は生きられないかもしれない、と考えることも以前はありました。かと思えば、私より若い人を見て、もう何十年も私の人生は終わってしまった、と考えることも以前はありました。しかるに、今日の私はというと、どちらを考えるつもりもありません。そうしたことを考えても、何も変わらないから、考えるだけムダである。と、思うようになりました。
 最近テレビのニュースを見ていると、風疹の感染の問題が目につきました。私自身は、風疹にかかったという記憶はありません。ワクチンを子供の頃に打った記憶もありません。もしかしたら昔かかったことがあるのかもしれません。現在、風疹が流行しているという情報を聞いても、それほど気にかかりません。
 小学校では、種痘や日本脳炎のワクチンを予防接種として受けた記憶があります。また、ツベルクリン反応のために注射をされて、陽性になると、BCGという針の粗い剣山(けんざん)のようなものを、肩の近くの腕の部分に押しつけられました。ただし、私が小学生の頃には、まだ、はしかや水疱(みずぼう)そうなどのワクチンの予防接種は無かったと思います。
 よって、私は子供の頃に、はしかと水疱そうにかかったことがありました。はしかは小学二年の時に学級内で流行って、私もうつされました。最初高熱が出て、四週間くらい休学して、自宅で安静にして寝ていたら治ってしまいました。
 私の療養中に、同じ学級の誰かが、一、二度、私の自宅へ何かを届けに来てくれました。学校給食のコッペパンとイチゴジャムとマーガリンだったことを今でもよく憶えています。イチゴジャムは、見た目は汚い無着色でしたが、着色料などの添加物を使っていないものでした。マーガリンは、銀紙で四角く包まれていました。また、授業時間に配られた問題集やドリルのプリントなんかも、届けてくれました。その内の一枚は、珍しくカラープリントで、スズメか何かの小さな鳥が空を飛んでいる絵でした。それは何かという設問に対して、小学二年の私は解答欄に「すずめ」と書きました。答えを見たら「ひばり」でした。
 水疱そうに関しては、小学四年の時に、やはり学級内で流行りました。治ってきて登校してきた級友に、私はうつされました。体(からだ)中に小豆の大きさの水泡(すいほう)ができて、気持ち悪かったのですが、痒(かゆ)くても手でかいたら、跡が残るからダメと言われました。お医者さんから白い塗り薬をもらった記憶があります。やはり三週間くらい休学して、自宅で安静にして寝ていたら、若干皮膚に跡が残ったものの治りました。その病気の痕跡(こんせき)も、いつの間にか無くなりました。
 私の場合、はしかも水疱そうも、最初三十九度くらいの高熱が出ましたが、それによる悪影響はありませんでした。それよりも、扁桃腺炎にかかった時の熱のほうが高くて、小児科医に行くとその解熱のために、馬にするような太い注射をお尻に打たれることがよくありました。
 はしかや水疱そうを私はそのように経験していましたから、世間ではしかが流行っているとか、二十歳前後の若者がはしかにかかって重症だとか、テレビのニュースで知っても、その程度の大きさがどれくらいなのかを想像できませんでした。子供の頃にそれらにかかってしまえば、免疫ができて、大人になってもそれほど気にかけることはない。と、子供の頃にお医者さんや両親から教えられていました。ですから、どうして今の世間では、そんなに大騒ぎするのかな、と不思議に思うくらいなのです。
 確かに、昔は、衛生状態が一般的に悪くて、そうした病(やまい)や疫病や寄生虫や病原菌やウイルスなどが原因で、命を失ってしまう例もありました。しかしながら、私が小学生の頃に、はしかや水疱そうにかかってしまった時は「感染したのは、仕方がない」と誰もが思いました。子供にその抵抗力がついて、快復するための対処がされました。それが、当時の大人にできた精一杯の処置だったのだと思います。
 インフルエンザにしても、ノロ・ウイルスにしても、ピロリ菌にしても、私は過去にそれらに最低一度は感染したことがあると思います。昔は余りに公衆衛生が悪くて、それらで命を失う人もいらしたと思います。しかし、幸いなことに、私は今のところそれらに感染しても、結局は治っています。
 最近私は、外から帰ったら必ず石鹸で手洗いを心がけています。つまり、病気を予防することを軽視してはいません。病気になることを予防するには、その具体的な予防手段も大切ですが、病気に対する体の抵抗力をつけるということも、病気の種類によっては重要だと思います。そう考えてみると、例えば、最近の若い人たちは本当に大丈夫なのか、若さにまかせているだけではないのか、と他人事(ひとごと)ながら気になるところです。病気の種類によって違うとは思いますが、考えられうるワクチンの予防接種をすべて受けたからといって本当にそれで十分なのか、それとも、そうではないのか、考えてみる必要があると思われます。