"Your Song"の日本語カバーに挑戦!

 YouTube動画サイトでジョン・デンバーさんの曲を検索していたら、偶然エルトン・ジョンさんの"Your Song"を見つけました。きっと、両者が似た感じの声や姿だったので検索に引っかかったようだと最初は思いましたが、あとで単純に考えてみれば、名前の「ジョン」つながりだったようです。
 以前私は、『イグアナの娘』について書きました。そのテレビドラマで使われていた曲(もしくは、そのインスツルメンタルの曲)が、エルトン・ジョンさんの"Your Song"でした。あの頃の私は、その唄の英語の歌詞を全く知らずに、テレビでこの曲を視聴していました。この曲の音楽およびメロディーの美しさを感じてはいましたが、歌詞の内容は余り知りませんでした。歌詞の結びの言葉"How wonderful life is while you're in the world!"くらいしか、わかりませんでした。「この世に君がいる(私の人生)って何て素晴しいんだろう!」という感じの意味に訳せますが、『イグアナの娘』本編のドラマのイメージと重なって、友とする相手への親しみを感じさせました。
 その『イグアナの娘』というドラマでは、人との関係もしくは人からの影響が、人間の成長にとっていかに大事かというテーマを感じさせてくれました。例えそれがいじめであっても、恋愛であっても、友情であっても、それ以外の関係でも、それらの区別無く、本当はどれも人間の成長には欠かせないことを、こうしたドラマから知ることができると思います。
 特に、このドラマの主人公がそのことに気がついて、今までの弱い自己から変わらなければいけないと、自ら決心するシーンがポイントになっていました。主人公が周りの人間といろんな関わりを持つことで、(イグアナの化身だったという)母と娘の悲観的な宿命さえも変えてしまう所に、このドラマの持つ一つの面白さがありました。詳しくは、機会を改めて記述したいと思っています。
 エルトン・ジョンさんのその唄には『僕の歌は君の歌(ユア・ソング)』という日本語訳のタイトルが既にありました。よく人から物を横取りする時に「君の物は、僕の物だよ。」というふうに日本語では言うことがあります。僕と君とが入れ替わっていますが、そのタイトル名では、何となくなれなれしい感じがしました。良く言えば、フレンドリー(friendly)な感じがしますが、悪く言えば、なれなれしい感じがします。そこで、今回の日本語カバーでは、一応無難な感じの曲のタイトル名にすることにしました。
 以下に、その日本語カバー曲を示して、若干の補足説明を述べておきます。


   『友への親しみ』


いつになく知る この胸のうち
隠せない いずれ わかるのさ
お金無いけど もし、有ったなら
一緒に住もうよ お屋敷に


彫刻では 稼げない
けれど、薬売りになり 旅に出たなら…
自信無いけど できる限りを
「君へ。」と捧げて 歌いたい


この歌を みんなに 伝えよう
ありがち だけれども 古くない


*でも気に しないで なぐり書きさ
 なんて 素晴しい 君がいると


(instrumental break)


田舎で 落ちぶれて
言い回しまで 荒れてしまった
おひさま注ぐ 屋根で 作った
聴いてくれている 人のために


忘れてごめん 君のことを
何色なのか 思い 出せない
僕の 胸を おどらせる
君の優しい まなざし


この歌を みんなに 広めよう
ありふれ てるけども 出来たてさ


(* くりかえし)


気にしちゃ 駄目だよ 親しみだよ
なんて 素晴しい 君と 一緒で…



 原曲の歌詞中で、"I sat on the roof and kicked off the moss"というフレーズがあります。ネット上の翻訳を調べると「屋根に座って、苔を蹴った。」というような訳が多いようです。この曲の作者が、都会から離れた生活をしていたイメージをそのように表現したと解釈されています。その解釈の方向は合っていると私も思います。ただし、"kicked off the moss"の訳は、「苔を蹴った」ではないと思います。"Rolling stone gathers no moss.(転がる石には苔がつかない。)"という英語のことわざがあるように、'moss(苔)'には、一つの場所にとどまる石に付着するイメージがあります。従って、'the moss'には、(苔がはえてしまうような、生活に流動性のない)田舎暮らしのイメージが読み取れます。また、'kick off'は、サッカーの試合開始の「キック・オフ」であり、「〜を始める」の意味に私には思えました。例えば「冷やし中華はじめました。」は英語に訳すと、"I kicked off the business of 'Hiyasi-Chuka'."みたいになるわけです。つまり、原曲のそのフレーズを私なりに訳すならば、「屋根で日向ぼっこするような、(のんびりした)田舎暮らしを始めた。」くらいに意訳できると思います。
 全体的に注意した点は、次のようなことでした。原曲の作者および歌い手は、共にイギリス人の紳士(gentleman)です。そのイメージを考えるならば、常識や礼節をわきまえた人物像を想像できると思います。昔なつかしの歌声喫茶で唄われていたロシア民謡『仕事の唄』では、次のようなフレーズがありました。
   イギリス人は利口だから 火や水を使い
   ロシア人は唄を唄い 自ら慰める
 ところが、エルトン・ジョンさんのこの"Your Song"を日本語に訳してみると、そうしたイギリス人の紳士的で聡明な面とは、別の側面が見られます。前述の「田舎暮らし」が影響していて、都会的に洗練されていないもの、つまり、粗野な部分も、この曲の作者や歌い手の人物像として推測されます。ですから、原曲の歌詞を読むと、都会的で、礼儀正しさが感じられると同時に、粗野で開放的で、親しみがあって、なれなれしい感じもしました。"I hope you don't mind"というサビが繰り返して唄われるのは、それらの相反するものが入り混じった感情ではないかと私には思えました。"put down in words"の直訳はただ「言葉に書く」ではあるけれど、何のよそよそしさもなく、率直な言葉を紙に書き下ろす(書きつける)感じにとれました。そのような感じを「書きなぐる」、すなわち「なぐり書き」という言葉で表現してみようと私は考えました。
 このような、紳士的でありながら、友愛的でもある唄の感じが、その伴奏にも影響を与えて、その音楽を美しくしているようにも思えました。