残念ながら、天才とは言えない!

 最近、ネットの遠隔操作を悪用する誰かさん(私はその人が誰かを知りません。)が、警察やマスコミを振り回しているように見えますが、残念なことです。パソコン歴30年そこそこの私からすれば、昔のハッカー模倣犯にしか見えません。ネット上で遠隔操作ができることは、Windows98の頃から簡易言語(スクリプト)で簡単に操作できるようにOSに標準装備されており、BASICやJavaでプログラムが組めて、少々のネットに関する知識があればできることです。
 『ユビキタス』というシステムの概念(コンセプト)でネットを利用した場合は、勤務先で自宅の家電を遠隔操作(リモート・コントロール)したり、その状況をモニタリングしたりできます。それが現状での、『ネット上での遠隔操作』の正しい使い方です。
 しかし、このような遠隔操作システムは、もし家電やコンピュータなどの機械が勝手に誤動作した時に、どのように復旧したら良いかということに問題があります。遠隔操作だけに、自宅に駆けつけてスイッチを直接手でオフすることができません。もしも、家電が煙を上げても、直接消火することもできません。自宅でそうした『想定外』への危機管理をするならば、電源喪失時の危機管理まで必要になってしまうかもしれません。
 つまり、マイクロソフト社でこの『ネット上の遠隔操作』ができるOS操作プログラムを開発した誰かさんは天才(?)であったと見られる反面、ちょっと常識に欠けていたように思われます。アメリカ的な実用主義から見れば、ネット上で遠隔操作ができるのは、SF映画の世界が現実化してカッコイイことは事実でしょう。しかし、インターネットのシステムを含めて、コンピュータ・システム全体のことを考えれば、これほど役に立たないものは無いと思います。ですから、私などはWindowsOS上でこの遠隔操作ができることを10年以上も前から知っていましたが、一度もスクリプトでプログラミングしたことはありませんし、この機能を実際に利用したことがありません。
 そこで、最近日本でこのようなネット上の遠隔操作で悪さをしている誰かさんは、昔のハッカーみたいな言葉で気取っていますが、他人のパソコンに遠隔操作をかけるなんて無責任にもほどがあります。他人のパソコンならば、例えプログラムが誤動作しても、自らのパソコン・システムに危害が及びません。『ネット上の遠隔操作』というOS機能の評価が十分でないことと、それを安易に利用してしまっていることが気になります。だから、優秀である前に、あるいは、天才である前に、稚拙で世間知らずと言わざるおえません。
 でも、こんなことになってしまう背景には、ネットやコンピュータ・システムの使い方を教える側にも責任があるように思います。あれやってはいけません。これやってはいけません。と、礼儀正しい優等生の『作法』を子供に教えてばかりいると、子供は「どうしてそれをやっちゃあ、いけないの?」と疑問を持つものです。作法も必要かもしれませんが、インターネットやコンピュータ・システムがどういう背景に基づいて成り立っているのかとか、インターネットやコンピュータ・システムの『本質』を教えてあげないと、人に迷惑をかけていることに気づけなくなってしまいます。
 特に、インターネット上に人間の心のモラルがなくなれば、詐欺行為が横行して、その世界は成り立たなくなります。法律がどうのこうのと言う前に、ネット利用者一人一人の善意の心をインターネットは必要としています。そうした常識的なモラルが教育されていないうちに、インターネット・システムを誰にでも解放してしまうことは、私たち自身が間違っていて、結局私たち自身が損害を受けることになると思います。