そば湯はどう食すか?

 先日テレビを見ていたら、こんなことを知りました。東京在住の大阪出身者は、そば湯をどう食(しょく)したらわからない人が多いそうです。長野県出身の峰竜太さんは、そば湯にはミネラル分が豊富なので、そばを食べた後にそば湯を飲むとのことです。
 長野県で生まれたわけでもなく、長野県で育ったわけでもない私が、こんなことを言うのも何ですが、そばの美味しい長野県に在住している強みを生かして、そば湯をどう食して生かしているかを私なりの考えで紹介してみましょう。
 私は東京生まれで東京育ちですが、長野県では必ずもりそばを食べます。どんなに寒い冬でも、もりそばを注文します。以前一度だけ試しに、もりそばと同じ値段のかけそばを注文して食べたことがあります。しかし、意外にももりそばほど口に合いませんでした。東京にいた頃に食べていたのと同じ温かいそばだったのですが、長野県で食べるには何となく違和感をおぼえました。私のまわりの雰囲気がどうのこうの、ということはなかったのですが、どんぶりの中のそばとそばつゆの食味の関係が何となくしっくりとこなかったのです。それ以来私は、どんな季節でももりそばを食べるようになりました。
 長野県の手打ちそば屋さんで、もりそばを注文すると、そば湯が付いてきます。以前は私も、そばを食べ終わった後でそば湯を飲んでいました。普通盛りのそばであったら、それでギリギリのセーフだったのですが、それより少々そばの分量の多い中盛りのそばを胃袋に入れた後でそば湯を飲むと、胃の中でそばがふやけてお腹が張ってしまいました。かなりお腹が苦しくなったときもありました。また、冷えて腰があるそばをいきなり口にすると、硬くて噛み切りにくいことがしばしばありました。そうしてよく噛めないために胃に負担がかかって、さらにお腹が張ってしまったことがありました。
 しかし、偶然の発見が私のこの事態を救ってくれました。そばを浸すそばつゆに、少しだけそば湯を注(さ)してみるのです。すると、不思議なことに腰があって硬かったそばがその汁の中で柔らかくなって噛みやすくなりました。そのことがわかって、私は湯飲みで最初に出てきたそば茶を飲み干して、その空(から)にした湯飲みにそば湯を注ぎました。そばを食べつつも、その合間にそば湯をちょっと飲むようにしました。
 つまり、そば湯には、何故だか理由はわからないけれど、そばを柔らかくする作用があるらしいのです。その作用を適度にうまく使って、そばの咀嚼(そしゃく)や消化を助けようというのが私の考えた作戦でした。案の定、私は、普通盛りよりも少し多めの中盛りのそばを食べてもそれほど腹が張らなくなりました。
 やはり、美味しいそばは、食後にお腹が張って苦しむよりも、楽しく食べ終わりたいものです。そば湯もまた、無駄にせずに飲んで楽しみたいものです。その両方を実現できる方法として、上に述べたやり方はお勧めです。まずは普通盛りのそばとそば湯で、無理せず試してみるとよろしいかもしれません。