何回聴いても飽きないテレビアニメ主題歌

 前回の記事で、テレビアニメ主題歌について言及しました。その流れで、今回は私が何回聴いても飽きないテレビアニメ主題歌の一つを紹介したいと思います。
 その曲を初めて聴いたのは1985年頃だと思います。『機動戦士Zガンダム』の放送期間の途中から代わったオープニング主題歌で『水の星へ愛をこめて』という歌でした。森口博子さんが歌っていました。
 私には6歳下の弟がいて、彼は『ガンダム』をよく見ていました。私は、いつしか弟と一緒に『ガンダム』を見るようになっていました。そのうち内容が複雑になってきて、弟が『ガンダム』を余り見なくなっても、私は一人で夢中になって見ていました。『ガンダム』が終わって二年たったら、『ザブングル』をやるというので、また見てしまいました。『ザブングル』と言っても、同名のお笑いコンビ命名の本家本元はこちらです。『ガンダム』と同じ、富野監督の作品で、私はこれで、いわゆる『メカもの』にはまってしまいました。主人公の人物たちは、昔の東映動画のように丸みのあるキャラクタでした。その一方で、メカがめちゃめちゃ複雑でした。それに続いて、『ダンバイン』『エルガイム』『Zガンダム』『ZZガンダム』『ドラグナー』あたりまで、気が向いた時にテレビの前で見ていました。
 こうした一連の日本サンライズ制作の富野監督作品の中で、何を私が気にいっていたかというと、まず、キャラやメカのデザインや色彩が、アニメっぽく、かつ、きれいであったことです。さらに、ストーリーやセリフ回しや細かい設定にも工夫があって、視聴者を飽きさせませんでした。特にセリフ回しには、名言もしくは迷言が多かったようです。そしてさらに、音楽の良さは、劇中ではもちろんですが、オープニングテーマとエンディングテーマは、すごくシャレていて、視聴者に土曜日の午後の開放感を与えるようなアニメ主題歌でした。いわゆる子供向けアニメの主題歌の域を超えて、大人向けのクオリティが付加された主題歌になっていました。子供向けとは到底思えない、最近のアニメ主題歌の『はしり』だったと思います。
 その一連のアニメ主題歌の中で、『水の星へ愛をこめて』という歌は、メロディも歌詞も美しいと私には思えました。歌詞は一見何を言いたいのかわからない、と一般的に思われるかもしれません。なので、少し説明します。水の星とは、地球のことです。この地球を含む、宇宙を舞台に、大きなスケールで何か愛のようなものを表現しているのが、この主題歌の内容なのです。オープニングのアニメを見ながら、この歌を聴くとその内容や表現の特異なことがよくわかると思います。
 このアニメは、宇宙ロボットアニメです。その主要なメカの一つは、Zガンダムという空飛ぶモビルスーツです。それは、超高速で飛びそうなジェット機の形になるために複雑な変形をするメカです。また、子供向け番組に登場すると必ず視聴者の目をひく種類の人物が描かれます。例えば、シャアという、謎の人物がそうです。例えば、彼は、ニュータイプではないけれど何を考えているのかわからない、主人公の少年から見ると謎の多い『大人』です。
 宇宙もまた、人類にとってまだまだ、未知の多い世界です。その宇宙全体を人間がどのように理解し、知力でとらえていくのかが、重要です。その意味で、この『水の星へ愛をこめて』というアニメ主題歌は、宇宙ロボットアニメの主題歌の一つであるにもかかわらず、広い広い宇宙を(我々が知覚できる)叙情的な情景に置き換えて表現しようとしています。そういう歌なのです。宇宙の広さや大きさを叙情的に感じ取って、ある意味美しく表現しています。こういう宇宙全体の見方、もしくは、世界全体の見方というものも、人間にはできるのだな、と私はしきりに感心しています。
 つまり、私は、この歌に従来のアニメ主題歌とは違う何か新しいものを感じ、それは、宇宙を叙情的にとらえて、美しく表現しているので、何回聴いても飽きがこないのだと思いました。