女性はなぜ男性より長生きと言われるか

 一般的にも統計的にも、女性は男性よりも長生きであると言われています。なぜそうなのか。諸説いろいろあるとは思いますが、今回は私の母の考えを披露したいと思います。
 母によれば、女性は食事を自分で料理(もしくは、調理)して食べることができるため、長生きできるのではないか、ということです。結婚して家族の食事を長年作っているうちに、年老いてからも、一人でバランスの良い食事を作って食べることを続けられるようになるためではないか、というわけです。ほぼ規則的に、栄養的にも、分量的にも、一人でバランスよく食事をとれるということは、長生きするための秘訣の一つではないかと思われます。
 そのためには、自分自身の体と相談しながらの長年の料理と食事の経験が必要です。一朝一夕には、身につかないことの一つだと思います。実際、夫婦間でも、旦那さんが亡くなっても、奥さんのほうが長生きできる例が多いと思います。逆に、老夫婦で奥さんを先に亡くした旦那さんの場合、途方にくれて、奥さんの後を追うように亡くなる例が少なくないようです。
 これが、精神的な支えを失ったからとか、奥さんを深く愛していたからとかの意味であったらばいいのですが、現実はそんなロマンチックなものでは無いらしいのです。私の母の言うのには、男性はお金を稼ぐ仕事に専念しなければならないために、食事を作れなくなっていることが問題だというのです。
 食事などの家事を女性に頼りきりになってしまうと、いざ奥さんが亡くなってしまうと、一人でどうすることもできなくて、途方にくれてしまうというのです。特に食事に関しては、ちゃんと食べられなくなると、命に関わります。結婚した男性は、日常的な食事を当たり前と考えて軽視しがちのため、それが命に関わることにさえ気付かないで、奥さんの後を追ってしまうようなのです。
 私は、こうした理由から、男性が自炊を経験することは恥ずかしいことではないのではないかと思います。食事を作ってくれる女性がいないことは、寂しいことです。でも、何が起こるかわからない世の中で、男性が一人で生活できないということは、結局自分自身の命を粗末にしているに等しいのではないかと思います。他人の命を心配する前に、まず自分自身の命を心配するべきです。
 60代の若さで亡くなった私の父は、まさにその悪いお手本でした。私の父は、家事は私の母に任せっきりで、日常ほとんど母を手伝いませんでした。母に言われた時だけ、やっているフリをして、母があきれて頼まなくなると、いっさい手助けしませんでした。また、人のことばかり心配して、人に健康のアドバイスばかりしていました。そのくせ、自分自身の体のケアに関しては無関心で、私の母にちょっと言われただけで、聞く耳もちませんでした。その結果、長年の不養生がたたって、長生きできませんでした。
 私は、そんな父を真似しないように気をつけて生活をしていますが、母からちょっと言われただけで反発してしまうことが矢張りあります。その意味では、一人でいる時間が多くあることは運が良かったと思います。自分自身を反省できる余裕があると、どこからどこまでが正しいか、それとも、正しくないのかを公平な立場から、つまり、客観的に考えられるからです。私のここがいけなかったとか、私の母のそこがいけなかったとか、いちいち検討して、問題を解消できます。
 それは兎も角、私は男性が毎日食事を作る経験を持つことは、決して無駄なことではないと思います。それどころか、自分自身の命を守るために必要なのではないか、とさえ思います。疑いすぎてはいけないかもしれませんが、このことに限らず、男性は女性にすべて任せっきりにしていいものなのかな、と思うことがいくつかあります。でも、まずは優先順位として、食事とか身近なことから取り組むべきだと思います。