私の本業 お金が欲しい人へ

 残念ながら、私は金持ちではありません。将来、振り込め詐欺や結婚詐欺に遭うといけないので、あらかじめ断っておきます。私は、自営業で個人経営なので、時には社長級の経営判断を迫られることもありますが、会社を運営しているわけではありませんから、社長や取締役やオーナーや株主ではありません。大金を動かす役職とか地位にはいませんから、詐欺師の人に狙われるとしたら的外れと言えます。
 それでも、お金があれば狙えると思うのが、詐欺師の人の言い分かもしれません。農業絡みでかなりの収益をあげたという人の成功例は、テレビでも口コミでもよく伝わってきます。しかし、私は自分自身で実作業をしていて、実際の苦労や現実が身にしみてわかっています。この情報はどうも『はったり』だとか、あの情報は『いい所しか見ていない』とか、その情報は『全くのデマだ』と見られるものが少なくないように思えます。ある情報は、若い人たちに農作業を押し付ける意図で、誇張した成果を自慢する、いわゆる『うまい話』だったりします。若い人たちを働かせるための恣意的な意図が感じられること自体問題ではありますが、農業を金儲けの『おいし手段』として利用されることには、私は抵抗があります。一歩譲って、農業で一度金儲けができたとしても、毎年いつまでもそれが続くとは限らないのが、農業経営の現実なのです。
 ですから、毎年の金銭の収支については、私は一般家庭並かそれ以上のチェックをいれています。農業の場合は、会社ではなく個人の経営であっても、収支内訳の報告書を逐一記入して、確定申告の書類に添付して、税務署に毎年提出します。農産物の売上高と、それにかかった全経費を、その収支内訳報告書に記入して提出します。さらに私は、生活費と小遣いを記帳する金銭帳(一般家庭の家計簿にあたります。)を記録しています。それらをまとめて、年間の自分自身の収入と支出がすべて把握できます。一人暮らしの人には、ぜひお勧めしたい習慣の一つです。
 従って、私の場合、用途の不明確なお金の出入りはあり得ません。これは自己破産しないためにも、有効な手段だと思います。自分自身の金銭の収支を押さえておくことは、仕事で無理無茶な働き方をしないためにも必要です。こういう仕事柄、一つ一つの儲けは少なくても、ほぼ永続的に持続的な働き方が大切です。
 もし私が誰かから「お金を貸して欲しい。」とか「お金が欲しい。」という趣旨のことを告げられたら、どうするかを言いましょう。例えそれが詐欺師であったとしても、否、詐欺師でなかったとしても、答えは同じです。詐欺師は悪人かもしれませんが、人間であることには変わりありません。人道的な配慮から、私が食べているのと同じお米(新米ではなくて、古米です。いきなり新米を食べて、おなかを壊す人もいるからです。)を分けてあげようと思います。そして、「そんなにお金が欲しいなら、アルバイトで雇ってあげるから、自分で稼ぎな。」と勧めます。自分でお金を稼げない人間に、私はお金を渡す必要は無い、と考えています。お金の本当のありがたみをわからない人間に、お金を渡しても無駄だからです。
 以前、副業でアルバイトに来てくれている、妻子ある若い男性に、こんなことを頼まれました。会社の本業が減らされて、生活が苦しくなったので、アルバイト代の時給を上げてくれないか、と彼は言うのです。私は、一日考えてから、こう答えました。農産物の収益が上がったわけではないから、アルバイト代の時給は上げられない。その代わり、時間外の仕事をもっとやってもらえば、時間外手当がプラスされるので、もらい分はふえるよ、と伝えました。彼は、子供みたいに何もしない、彼と同い年の奥さんが居て、子育てのほとんどを彼に任せていました。子供の世話があるからと、夜の7時を過ぎても亭主が家に帰ってこないと、電話がかかってきて、残業をさせてくれません。そんな彼を働かせる口実を、私は見つけてしまいました。彼は、私の案に納得して、夜の8時まで働いてくれました。
 「お金が欲しいなら、真面目に働きなさい。」これが、私の言い分なのです。