私の本業 育児に優しいアルバイト先?!

 私の雇っているアルバイトの人たちは、二人とも本業を持っていて、私の所へは副業として来てくれています。家族がいるため毎日の収益が十分でなく、少しでも家計の足しになるように、アルバイトで副業を持ちたいと考えている人たちのようです。
 しかし、彼らからはしばしば「今日行く予定だったのが、これこれしかじかの理由で行けなくなった。」と電話で連絡がかかってきます。その理由のほとんどは、家族に関することです。「娘の仕事の都合で、孫の面倒を急に見なければならなくなった。」とか、「子供が急に熱を出して病院に連れていかなくてはならなくなった。」とか、「嫁の具合が悪くなって、その代わりに幼稚園に子供を迎えに行かなくてはならなくなった。」などの理由で、アルバイトを休まして欲しい、と連絡してくるのです。
 かつての私は、普通の経営者と同じように、雇った人のために仕事を作っていました。地元のハローワークにアルバイトをしてくれる人を募集していた1年目と2年目は、収穫とか箱詰めとか彼らにできる具体的な仕事を何とか用意していました。ところが、彼らの来たい時間がそうした決まった作業の時間と合わなかったり、家族の都合で来れなかったりということが余りに多くなってきました。せっかく彼らのために仕事や作業を用意しても、それらの仕事も作業もまったく進まず止まってしまい、しばしば本当に困ったことになりました。
 私としては、「無理をして、この時間に来て欲しい。」とは言えませんでした。なぜなら、無理に来てもらっても、家族のことで心配をかかえながらでは、作業がはかどるわけがありません。また、いろんなストレスをかかえながら、彼らが私の所との行き来で交通事故などを起こしてもらっては大変なことになります。
 実は私自身もサラリーマン時代に、祖父母や父母が体調を崩して入院するほど悪くなった時に困ったことがありました。仕事が忙しいことが多かったので、家族のことを心配している余裕はありませんでした。つい会社に対して遠慮してしまい、忙しい仕事を続けるしかありませんでした。このような困難は、私にかぎったことではないと思います。人によっては、親が怪我か病気で寝たきりになってしまったために、会社をやめて親の介護を引き受けてしまう若い人だっています。もしその親が亡くなった時、その若い人はどうやって生きていけばいいのでしょうか。こんな世の中ですから、一回会社をやめたら、そう簡単には再就職できないに違いありません。(と、私は母から話を最近聞いたことがあります。)
 ですから、私は、育児手当とかを払えるほどの金持ちではないけれど、せめても、彼らの育児の邪魔をしないようにしたいと考えるのです。一般に育児というと、子供の相手をすることだけを言うことかもしれませんが、子供が怪我や病気をした時に親が駆けつけることは、最低限の義務ではないかと思います。このことは、各人で子供の頃を思い出していただけば、わかると思います。親に病院へ連れて行かされたことを憶えている人が多いと思います。テレビドラマのシーンで、病気の子供を抱えた父親か母親が、お医者さんの閉まったドアを夜中に必死でたたいている姿が描かれたりします。普通、親はそれだけ子供のことが心配なのです。
 そのために考えた私の対策は、アルバイトの人にどんな作業も委託しないという方針でした。ここ二、三年は、この方針に基づいて作業を進めています。つまり、仕事のプロデュースをしながら、現場監督をしている私は、自ら進んで仕事や作業をやっています。アルバイトの人は、いつ来てもその場で仕事をしている私の補助・手伝いをする役になります。事故になりそうな無理な作業やその責任を任せることはありません。雇っている人に無理な作業をさせて、事故でも起こされたら、並大抵の傷害賠償では済まされません。そうした危険な作業については、私がすべて請負います。また、上手く行かない作業の責任は、それを説明・指示した私が負うことになります。このようにして、アルバイトの人の、精神的・肉体的負担を少しでも軽減しようというのが狙いなのです。
 育児関連では、こんな話を聞いたことがあります。レタス農家をやっているある30代の男性は、毎日二人の幼児を畑に連れて行くそうです。農地で作業をしながら、二人の幼児を遊ばせて面倒を見ているそうです。奥さんが、医療関係の職についていて子供の面倒が見れないため、彼がイクメンを引き受けているという話です。実は、この話の真偽は不明です。なぜなら、トラクターを使っている場所で子供がいるのは危険だからです。レタスの収穫の忙しい時期であったら、作業の忙しさにかまけて子供たちに注意がいかない恐れもあります。
 しかし、それでも、この男性は待機児童の問題を解消する方向に動いているように思われます。子供たちに十分注意が行き届くならば、実現の可能性は十分あります。「農業で1年で1億稼いだ。」という噂よりよっぽど信じられる話だと、私には思えます。