現実的な話をさせて頂きます

 相手との付き合い方がわからないから、とか、相手とどう付き合ったらいいかが想像できないから困る。という、悩みをよく聞きます。若い人によくある悩みのように聞こえますが、実は大人にもあります。親が思春期以降の子供の気持ちがわからなくなって、心配になることはよくあることです。
 ならば、我が子とどう付き合っていいかわからないから虐待しました、という意見が仮にあったとします。これは正しいことなのでしょうか。いいえ、言い訳になっていないと、誰もが思うはずです。
 人間はみんな違うのです。そんなに簡単に相手のことがわかったら、誰も苦労しません。私はこの年になっても、まだ自分に合った、もしくは、自分と同じ考えをもつ人間に出会ったことがありません。そんな人間がいたならどんなに楽だろう、毎日ストレスを感じなくてすむだろう、とずっと昔から思って生きてきました。人との関係は、実は、わかっているつもりでも本当はそうではない、すぐには答えのわからない数学の問題のようなものなのです。(数学の嫌いな人にはお気の毒ですけど。)
 しかし、私たちは毎日いろんな人と出会って、その一人一人にいちいち悩んだりしてはいられません。元来、人と会って話し合いをすることは、初対面でも長年の付き合いでも、新たな発見があって、驚きの連続のはずです。人から自分の知らないことを学び、自分もまた今まで知らなかった自分を知るきっかけになるのです。
 たとえ相手の話を聞いていやな思いをしたとしても、(実際は相手によるかもしれませんが)それが相手を理解するきっかけになるならば、いくらでも話を聞いてみたいと、私なら思います。私みたいな人間を、別名『恋愛のできない人間』と言うのかもしれません。映画やテレビのドラマの世界に憧れるのも、そのせいかもしれません。
 要するに、いちいち悩んでいる暇があったら、自分以外の誰かと何でもいいから話をすればいいのです。すぐに答えが出なくても、それだけで十分なはずです。