昔話法廷『かちかち山』をテレビで観て

 1月2日と3日の間の夜中に、Eテレで、昔話法廷『かちかち山』の回を観ました。あの、ウサギとタヌキのリアルできれいな被(かぶ)り物が見られる回の再放送でした。その、長くて白い耳の立ったウサギが、人間の裁判所の法廷で、タヌキを殺そうとした罪に問われて被告人となっていました。なぜ今回この番組の放送なのかと考えてみた私は、「そうだ、今年はウサギ年だ。」と気がつきました。

 その昔話をもとにした、ちょっと変わった裁判は、今回もまた、視聴者に裁判の進行の仕方を学ばせてくれます。さらに、今回の『かちかち山』裁判は、おばあさんを殺害されたウサギを被害者遺族としても、おばあさんを殺害したタヌキを加害者(その罪で現在服役中)としても扱っていました。今回は、(検察側の言うとおり)タヌキの罪を問う裁判ではありません。けれども、今回のウサギの罪は、その前にタヌキの罪があったからこそ生じたと言えます。すなわち、被害者遺族が加害者に報復(仇討ち)をした場合、その罪をどう裁くか、という問題が提示されていました。検察側の指摘によると、殺害未遂に終わったウサギが、再びタヌキと出会った場合、タヌキに危害を与えはしないかということまで問われていました。

 この、ちょっと変わった裁判にどんな判決を下すべきか、興味があるところです。もしも私が裁判員の一人になっていたとして、どう発言するか、考えてみました。検察側の主張は、「仇討ちでタヌキを殺そうとした罪をつぐなわせるために、ウサギを刑務所に入れるべきだ。」ということです。そのように罰を与えることによって、仇討ちの気持ちを断念させようとする意図であると、私には推測できました。

 しかしながら、もともと被害者遺族であるウサギが、刑罰を公的に与えられて、その気持ちをおさめる方向へいくのか、私には疑問です。おばあさんの仇討ちをしたいという気持ちが、不当な刑罰を受けることによって、かえって以前よりも増幅してしまうことだって考えられます。タヌキをこらしめた行為を反省している様子(そんなことをしても、おばあさんは生き返らないということに、ウサギは気づいている等々)があるので、その刑に執行猶予をつけるべきだと、私は思いました。もちろん、ウサギを厳罰に処したら、(ウサギ年の)年始そうそう縁起が悪いなどと思っているわけではありません。