調べて安心を得る

 今回、東京の自宅に帰ったことには、大きな目的が一つありました。かつて、町工場だった自宅および熔接屋の父の作業場には、古い蛍光灯がいくつも使われていました。私は、長野県にいる時に、PCB使用安定器の付いた蛍光灯などを見つけて適切に処分しないと、国の罰則規定に引っかかるという、広報をテレビの民放でしばしば目にしていました。その期限が、今年(令和5年)の3月31日までで、あと1カ月を切っていました。そこで、ネットで日本照明工業会のホームページを参照して、自宅の蛍光灯はどうなっているのかを調べてみることにしました。
 まず、家庭用に使われている蛍光灯を順番に、天井から降ろして調べました。蛍光灯安定器は、器具のカバーで覆われているため、ネジやはめ込みを外してみました。すると、それは器具の中に必ずありました。銘板が付いているものは、その入力電圧(V)、入力電流(A)、消費電力(W)の数値を読み取って、消費電力/(入力電圧×入力電流)を計算します。その値(力率)が、0.85(85パーセント)以上のものは、PCB使用安定器の可能性が高いということでした。しかし、私が調べてみたところによると、どれも0.5から0.6まで(50パーセントから60パーセントまで)でした。また、使用している安定器に銘板が付いていない蛍光灯が1件ありました。製造メーカー名を聞いたこともない、古い蛍光灯だったので、怪しく思いました。
 そこで、先に述べた日本照明工業会のホームページを中心に、どうやって調べたらいいかを探しました。製造メーカーがわからず、銘板が読めない蛍光灯安定器は、PCBを含むと疑ったほうがよい、とも書かれていました。しかし、私は、さらにいくつかのホームページの内容を隅から隅まで読んでみました。すると、『裸安定器』という項目を見つけました。これは、鉄芯にコイルが巻かれた形状で、他にコンデンサーが使われていないとすれば、PCBを含んでいない代物だそうです。つまり、そのような『裸安定器』であることがわかれば、銘文が読み取れなくても、製造メーカー名がわからなくても、PCB使用安定器ではないということが判別できるのだそうです。この手の『裸安定器』が、PCB中間処理場に多く持って来られているという現状も、ネットの情報として知ることができました。
 それはともかく、先に述べた、銘文が付いていない怪しい蛍光灯安定器は、まさに層状に重ねられた鉄芯にコイルが巻かれていて、乾式になっていて、黒い油状のものが全く見られない代物でした。すなわち、PCB有害物質が漏れ出るようなものではないことが判別できました。そこで、元は熔接の作業に使われていた場所の、少し大きな蛍光灯も調べてみました。器具内部を見るためのカバーの開け方は違いましたが、簡単に中の蛍光灯安定器を見ることができました。すると、やっぱし鉄芯にコイルが巻かれた乾式の裸安定器でした。
 逆に、もしも、PCB使用安定器が見つかった場合は、3月31日までに自治体に届け出をして、有害物質が漏れないようにして、業者に廃棄物処理をしてもらわなくてなりませんでした。だから、私は、そうではなかったことを調べて確認できたので、ほっとしました。
 その作業場の歴史を振り返ってみると、ちょうど昭和30年代初期に建てられたものでした。そこの蛍光灯の電源は、天井に埋め込まれていて、蛍光灯本体をそのままでは下ろせないようになっていました。今回、私が本体の内部を調べる時も、下からネジを外して、カバーも外して下へ降ろしました。つまり、その作業場が完成してから、ずっと天井にぶら下がっていた器具だったのです。その裸安定器をよく見てみると、その後の安定器(コンデンサ)よりも原始的な外観をしていました。そんなに古い部品なのに、今でも普通に灯りが付くというのは、その内部を覗いた後の私にとっては不思議でした。もちろん今では、たまにしかそれらの蛍光灯は使用されていません。しかし、今でも器具が長持ちしていて、故障一つ無いというのは、パソコンなどに使われているコンデンサの寿命を考えてみると、本当に不思議だなと思うのです。