宇宙人自決の理由をめぐって

 ウルトラセブン第37話『盗まれたウルトラ・アイ』は、この特撮ドラマシリーズとしては異色の内容でした。ウルトラセブンに倒されるべき、いわゆる「火を吐く着ぐるみ大怪獣」が登場いたしません。着ぐるみ宇宙人も、地球に味方する正義のヒーローのウルトラセブンだけでした。着ぐるみ怪獣や化け物を目当てに毎週この番組を観ていたちびっ子たちには、物足りない30分間だったかもしれません。ただし一方、大人に近い視聴者層からしたらば、その話のナゾにのちのちまでも填(はま)ってしまう放送回の一つだったようです。現在のネットを閲覧してみても、この『盗まれたウルトラ・アイ』についての感想や解説で肯(うなず)けるものを多々拝見できると、私は思いました。
 特に、週替わりで地球を侵略しに現れる宇宙人が、今回はいつもとちょっと違いました。恒星間弾道弾という巨大で強力なロケットかミサイルみたいなもので、地球を消滅させてしまおうというのです。そのような理解不可能な武力行使に、人類は直面します。毎週、巨大怪獣や侵略目的の宇宙人に立ち向かってきたウルトラ警備隊は、この宇宙脅威的な兵器にまったく歯が立ちません。しかも、今回の宇宙人は、地球に味方して邪魔をするであろうウルトラセブンの足を止めるべく、スパイ工作員を地球に送ります。その第一の任務は、ウルトラ・アイをモロボシダンから盗むことでした。
 このように、マゼラン星人の思い通りに作戦遂行されてしまう地球側、そしてウルトラ警備隊なのですが、地球の娯楽エリアから発せられる怪電波と、それに対するマゼラン星からの返信内容を解読できてしまいます。そして、モロボシダンは、その工作員が母国の星に裏切られて、地球もろとも消されてしまうことを知るのです。
 侵略するほどの価値もない「こんな狂った星」と地球のことを言って、母国の星から迎えが来ることを健気に待っている、その工作員に、モロボシダンは真実を伝えます。そして、この地球で共に生きようと提案します。しかし、母国の星に見捨てられたことが、どうしても許せなかったのでしょう。そのマゼラン星人は自決することを選ぶのです。
 「なぜ、ほかの星ででも生きようとしなかったんだ。ぼくだって、同じ宇宙人じゃないか。」と、モロボシダンはぼやきます。しかし、彼ら二人との間には、おのおのの正義に対する明確な違いがあったと、私は思います。モロボシダンことウルトラセブンにとっては、地球が「こんな星」でも、他の宇宙人の侵略から守ることに意味がありました。しかし一方、マゼラン星人の工作員からすれば、母国の星のためにいくら思いや力を尽くしても、結局は「こんな星」と共に命を奪われ、粗末に扱われてしまう。そんな意味の無さ、つまり、理不尽さに抗議するために、自決の道を選んだのだと思います。
 ちょっと悲しい話ではありましたが、正義のヒーローがただ怪獣を倒して終わりというよりも、ずっと心に残る、考えさせられる話だと、私は思いました。