人が、力に溺れてしまうと…

 今回は、私の妄想談義を披露いたしましょう。別に気にしない人は、信じなくてよいと思います。私のたわ言に過ぎないのですから、真剣に取らなくて結構です。
 先日、ロシアでは、新たな外交的報復措置として日本人63名のロシア入国禁止を通告しました。確かに、ロシアになんか訪問したくないという人には、あまり響きそうにない制裁措置です。日本側も、即座に対抗措置を表明しました。私は、それは妥当だと思います。
 なぜならば、ロシア側からのメッセージには、大いなる野望が感じられるからです。それが私の妄想あるいは憶測にすぎなければよいのですが、人文的な意見として一考の価値はありそうです。
 つまり、こういうことです。現在のロシアは、帝国主義軍国主義の力による脅しを背景にして、『大露西亜(大ロシア)共栄圏』を目指しているように見えるのです。私は、どこかの国のスパイではありませんから、それに関する機密情報を持っているわけではありません。ただ、そのように考えて想像してみると、今回の入国禁止通告にも不思議と納得がいってしまうのです。
 つまり、目の前の戦争にすべて勝って、ロシア連邦の領土が拡大し、友好国もその影響下に入れて、力による脅しを世界的なスタンダードにできて、世界のほとんどの国がロシアの言うことをきくようになったとします。(あくまでも、仮定の話なので、本気で反論しないでください。)そうなると、世界中の国と地域のほとんどどこへ行こうとしても、日本人63名は、いわゆる出禁になる、というわけなのです。
 ロシアの上層部は、そんなクレイジーな前提で、今のうちに手を打っておこうと考えている可能性があります。折りしも日本では、こどもの日という祝日でした。それにちなんで説明いたしますと、それはどう観ても、特撮ヒーローもの『仮面ライダー』の、世界征服をたくらむ悪の組織『ショッカー』レベルの画策に等しいと思います。私としては、それを馬鹿にしないで、彼らの心の奥底にのめり込んで考えてみることにしました。
 つまり、国家権力の『力』に溺れてしまうと、人間は、人としての心を失くします。すなわち、心が死んでしまいます。したがって、軍事的あるいは謀略的な力の行使を楽しんでいるだけの亡者になってしまいます。それを受けて、無表情で思考停止になっている、しもじもの人たちが増えているようにも見受けられます。『大露西亜(大ロシア)共栄圏』を目指しているなどという言いわけを考え出せるようならば、それは、まだしもマシなのかもしれません。けれども、力に溺れているご自身が人間であることを、彼らは皆、すっかり忘れておられます。その『力』を「人が人を殺す」ために行使する者は、他者から恨みを買うものです。それと同じ『力』で他者から滅ぼされても、誰も同情してくれません。誰もかばってくれないかもしれません。
 そのように反面教師的に考えてみると、力に溺れることは、人間の弱さの一種であり、誰がどんな助言をしてあげても、変えられないことなのかもしれません。それを踏まえた私の結論は、次のとおりです。そのような人間の弱さに立ち向かえる、かの地のロシア人は、今のところ残念ながら一人もいません。行き着くところまで行ってしまうと思います。私たちが、その巻き添えとなって被る損失をいかに最小限に持って行けるかどうかに、民主主義陣営の多くの人々の英知が試されることとなります。