”Everybody Wants To Rule The World”の日本語カバーに挑戦する

 ”Everybody Wants To Rule The World”という楽曲は、ティアーズ・フォー・フィアーズTears for fears)というイギリスの男性二人組が1985年あたりに発表した楽曲の一つと言われています。私も、その頃に、夜中のテレビでやっていたビルボード・ヒットチャートという番組をたまたま観ていました。その番組の中で、彼らの楽曲の紹介PV(プロモーション・ビデオ)を観ました。
 この曲のタイトルを直訳すると、「誰もが世界を支配したがっている」という穏やかならぬフレーズが気になりました。しかも、曲中で何度もそのフレーズが力強く繰り返されるので、戦争や独裁者のイメージが浮かんできます。ところが、PVではそんな感じは微塵もなく、疾走するオープンカーや競技用バイク、大空を滑空するグライダーや、楽しそうにダンスをする2人の黒人のお兄さんたち等々、伸び伸びとした雰囲気の映像が続きます。
 その楽曲の歌詞とPVの余りにかけ離れたギャップが、私には長い間、ナゾでした。ところで、今回YouTubeで私が見つけた日本語訳付きの動画には、「誰もが全てを 思いのままにしたいというのに」という柔らかなニュアンスで訳されていました。
 もちろん、”Everybody wants to rule the world”という一文を「誰もが世界を支配したがっている」と直訳の意味で理解することは、間違ってはいません。一方、この歌詞フレーズを「誰もが全てを 思いのままにしたいというのに」と意訳するのも間違いではないと思います。PVを視聴して、かつ、歌詞全体を読んでみると、後者の訳のほうがイメージ的に広がりがあって、文字通り思いのままに、すなわち自由に翻訳できそうに私には思えました。
 つまり、もっと言えば、次のような文の仕組みになっていると思います。英語的には、”wants to rules the world”(世界を支配したがっている)という部分にこだわっていると、強権的で独裁的ですが、その頭に主語として’Everybody’が付くことによって、「老若男女の誰しもが、そうしたい気持ちがある」という意味になります。そうなると、文全体のニュアンスが変わってくると思います。
 そこで、そんなふうな見方で歌詞全体を見直して、私のやり方で日本語に意訳してみようと思いつきました。以下に、その内容を示しておきます。

 

 『思いのままに!』


 二度と来ない 好きにしな
 放任してても 大丈夫さ やることやってるさ
 掟に背いて
 思いのままなのさ

 企みも 責任も 自分持ちさ
 最大限の 自由と快楽
 限りはあるけど
 思いのままなのさ

 閉ざされて はかない 
 ひそやかな ふれあいの
 きみらに味方する
 成せる うれしさ
 失くす かなしさ
 思いのままなのさ


 見通しないまま 迷うのよくない
 思いのままでよい

 そんなものは絶対いらないと
 騒いだとしても
 思いのままなのさ
 
 自由と快楽 限りはあるけど 思いのままなのさ

 

 まず”welcome to your life”の”welcome to ...”という言い回しは、「~にようこそ」と訳すのが普通です。しかし、ここは「人生を好きに使ってよい」という意味にしたほうがぴったりときます。
 また、”Nothing ever lasts forever”(永遠に続くものは何もない)すなわち「限りある」ものだけれど『自由とか快楽といったもの』の全てを最大限に受け止めて、思いの気ままに行動してくれていい。あるいは、見通しのつかないことと結びついた(married with a lack of vision)優柔不断さ(あるいは、あいまいさ)にぼくはがまんができない( I can't stand this indecision)。そしてまた、何をするのかを自分で計画して(my own design)、何かをしたことに自責の念を持って(my own remorse)、どちらも自分で判断させてくれ(Help me to deside)というふうな感じに、日本語に訳してみました。すなわち、自由に生きるために、自ら考え、かつ、受け止めて反省し、「何をすべきか、すべきだったか」を自ら判断する『自主性』がいかに大切かを伝える歌詞ではないか、と私は思いました。
 ところで、”There's a room where the light won't find you/Holding hands while the wall come tumbling down”という2行の歌詞フレーズは、日本語に訳しにくいかもしれません。しかし、’room’(部屋)との関連で’light’は部屋の小さい窓、、’wall’は部屋の壁をそれぞれ表しているとわかると思います。「窓から中にいるかを確認できない閉ざされた部屋で、その壁が崩れ落ちてくるにもかかわらず、きみらは手を握り合っている。」みたいな意味の訳ができると思います。
 以上のように、彼らの曲の歌詞には、独特の表現が随所に見られます。それは、興味がわいて参考になると、私は思いました。歌詞だけでなく、彼らの曲を聴いてみるとわかりますが、かなり独特なサウンドです。PVの映像もそうですが、独特でユニークだと思います。
 1985年というと、今からかなり昔と感じられるかもしれません。しかし、この曲は、ある意味でそのような時代遅れの『旧さ』を感じさせません。そういう意味からも、今回このイギリス人の二人組の楽曲の一つを、ブログ記事に取りあげてみようと、私は思ったわけです。歌詞のみならず、サウンド的にも、映像的にも楽しめるので、そこが現代的だと思います。なので、『ある意味』でおすすめです。