『世界に一つだけの花』の英語カバーに挑戦!

 先日、SMAPさんのベストアルバム『SMAP 25 YEARS』の収録曲が決定しました。今回のアルバムは、ファンからのリクエストによって収録曲が決定したそうですが、『世界に一つだけの花』が12位になったことを知りました。1位になった曲は、私の全く知らない『STAY』という曲でした。もちろん、私は、SMAPさんの特別なファンではないので、このことでファンの人たちに口出しをする権利はありません。
 SMAPのファンの人たちにとって、その『STAY』という曲は、特別な曲だったようです。ファンの人たちにとっては、このグループを存続させたいという思いが一番なのだと思います。そのために、おそらくSMAPのファンでない人にはなじみの少ない、その曲をナンバーワンに選んだのだと、やがて私にも理解できました。
 本当のことを申しますと、私は、『世界に一つだけの花』がSMAPの楽曲の1位に選ばれなくて、内心ほっとしました。なぜならば、「ナンバーワンにならなくてもいい」という歌い出しのこの曲が、ナンバーワンの曲になってしまったら、元も子もないからです。明らかに、自己矛盾を起こしてしまいます。
 ところで、私は、ネットのYouTube動画サイトで、この曲の英語や中国語などの外国語バージョンを拝見しました。特に英語バージョンは、英語翻案のカバー曲としては完成度が高いと思いました。ただし、曲のサビの部分が日本語で歌われていた点が残念に思えました。そこで、私なりに和文英訳をしてこの曲のフル英語バージョンを作ってみようと考えたわけです。さっそく、その成果を以下に示して、解説を加えてみたいと思います。



    "A Flower Unique In The World"



'Tis unnecessay that you think you are number one
'Cause you are already the only one


I remember I found something good at a flower stop
With various flowers in the sight of me
I found that each of flowers had its charming shape
Though we had many likes and dislikes in them
And these flowers by no means raced to the first among them
They hated to conflict for all the world
Every flower was proud of itself in every pail
They stood together with their heads held high


But too many human conflicts bother all of us
We are always eager to see who is the best of us
Everybody is different from one another , though
How stupid it is to compete for the top !


So we are thinking
Each of us is a flower unique in the world
We've all sorts of seeds different from one another
'Tis the most important to let them come into flower
We simply think that's a good enough effort



I remember I found a person making a bitter smile
He had been at a loss to choose the best flower
He couldn't do it 'cause all the flowers did the best
And he found that they were all beautiful
At last I saw him coming out of the flower shop
I found that he carried them under his arm
They were full of various flowers which he purchased
He came out of this shop smiling all over !


What is more, I did not know who that person was
But one day he gave me a full of hope and smile
This smile looked like flowers blooming in that place
Where nobody took notice of them


Like these flowers
Each of us is a flower unique in the world
We've all sorts of seeds different from one another
'Tis the most important to let them come into flower
We simply think that's a good enough effort


You can see big flowers with little flowers
All of these flowers are different from one another


'Tis unnecessay that you think you are number one
'Cause you are already the only one


Lah, la, la, lah, la, la, lah, la, la, lah, lah .....



 私がネット上で見つけた、この曲の英語バージョンのタイトルは”The Only Flower In The World”でした。そのような英語表現は、間違ってはいないと思います。’only’には、「ただ一つの」とか「たった一つの」という形容詞の意味があります。(言うまでもなく、’only’の前に’the’が付くのは必須です。)
 しかし、私は、「世界でたった一つの(あるいは、唯一の)」という意味で”unique in the world"という形容詞句を使いたく思いました。日本語でも、「あの人はユニーク(unique)な人だ。」とか「ユニークな発想」というふうに日常の言葉で使います。また、’the flower’ではなくて’a flower’という不特定冠詞の’a’が使えるので、普通の一般的な花を指すことができる。つまり、人間に例えて言えば、特定の人ではなくて『みんな』を指すことができると思います。何と言っても、そのような英語表現の仕方が、私には気に入りました。
 冒頭の歌詞フレーズの日本語を、英文に直訳するのはかなり難しいのかもしれません。「ナンバーワンにならなくてもいい」の「〜しなくてもいい」を英文に直訳するのは無理があります。「〜していい」のか「〜しないでいい」のか、曖昧ではっきりしないからです。このような言い回しは、自然な日本語なのですが、外国語に翻訳する時に障害となります。私は、少し意訳して、「あなたがナンバーワンだと考える必要はない」という意味の英文で表現してみました。また、「もともと特別なオンリーワン」というフレーズも、そのままの内容を英文に直訳するのは困難です。「なぜなら、あなたは既にオンリーワンなのだから」と意訳してみました。
 なお、’'tis’は’it is’の縮約形、’'cause’は’because’の口語体を使用しました。英語の歌詞フレーズの最初で、強く歌う箇所に使うと効果的な単語です。例えば、イギリスのビージーズさんの”In the morning”という曲中で、”'Tis the morning of my life”(「それが僕の一日の生活の始まりなのです。」の意味。)という歌詞フレーズが使われています。私は、そうした用法を参考にして、今回の英語の歌詞を作るのに使ってみました。
 原曲の日本語歌詞から翻訳する上で、次に問題になったのは、花屋の店先での出来事をそのまま英文に直訳すると、歌詞の1番と2番の内容の時系列がバラバラになってしまうことでした。原曲の日本語は、実は現在形と過去形が混在する文章だったのです。その現在形は、過去の事実に臨場感を出すために使われています。こうした用法は、日本文だけでなく英文にもあります。ただし、英語には、さらに時制(tense)という規則があって、事実の順番を、文あるいは文章が反映していなければなりません。過去の事実を表現している文中に、現在の事実が入っていてはいけないわけです。また、過去に起こった事実の順番が逆転していると、わかりにくい文章になってしまいます。
 従って、花屋の店先での一件は、1番も2番も全て過去の時系列に収めることにしました。すなわち、”I remember”を文頭に置いて、花屋の店先での一連のできごとを順番に過去形で記述していく、というスタイルをとってみました。その次に続く、「それなのに僕ら人間は〜」や「世界に一つだけの花〜」などの、いわゆる『サビにつながる部分』や『サビの部分』の歌詞フレーズは、日本語の文型に素直に従って、現在形か過去形かを決めました。
 ところで、1番の最初の1行目で「花屋で何か良い事を見つけた」(I found something good at a flower shop)という、原曲の日本語歌詞には無い歌詞フレーズを追加しました。原曲の日本語歌詞をたどっていくと、何となくそのことがわかってくるのですが、英語に訳していくと、最初に明確にそう言っておかないとわかりにくいと思ったからです。つまり、「競って一番になること」がどうして悪いのかと聴き手に反論されるような気がしたからです。「競って一番になること」もいいことかもしれないけれど、それとは別に、何か他にも良い事(あるいは、良い考え)があるんだよ、という曲の感じにしようと思いました。
 ”I found that each of flowers had its charming shape/Though we had many likes and dislikes in them”(「人それぞれ好みはあるけれど/どれもみんなきれいだね」の英訳)は、原曲の歌詞フレーズの文の順番を逆にしています。また、”by no means raced to the first among them”は、「その中で、決して1番を競わなかった」という意味の表現になると思います。”hated to conflict for all the world”は、「争うことを絶対にしなかった(=絶対に嫌った)」という意味になると思います。なお、”with their heads held high”という言い方は、’proudly’と同じで「堂々と胸を張って」という意味です。また、その1つ前の行で、バケツを’pail’という単語で表しています。”a pail of water”で「バケツ(あるいは、手おけ)一杯の水」という意味になります。”in every pail”で、「それぞれのバケツに入って」という意味を表現してみました。
 「それなのに僕ら人間は/どうしてこうも比べたがる」という原曲の日本語歌詞は、”But too many human conflicts bother all of us/We are always eager to see who is the best of us”(「しかし一方、人間同士の争いの多くが、私たちみんなを悩ませている/いつも私たちは、誰が一番かを比べたがりがちである」というような意味。)というふうに表現を変えて意訳してみました。なお、ここでの「比べる」は、単に「比較する」の意味ではなく、「優劣を争う」という意味なので、’compete’を使うのが適切だと思いました。従って、”compete for the top”で「一番になろうと優劣を争う」という感じの意味を表せると思いました。
 「そうさ僕らは」や「そうさ僕らも」の、原曲の日本語歌詞フレーズは、以下に続くサビ部分のフレーズとの『つなぎ』(あるいは導入)の英語表現として意訳してみました。
 さて、「世界に一つだけの花/一人一人違う種をもつ」以下のサビ部分の英訳は、「私たちはおのおの、世界に一つだけの花(のよう)である/私たちは、お互いにそれぞれ違う種類の『種』(すなわち、素質)をもっている/最も大事なことは、それら(おのおのが持っている素質)を開花させることなのです/(するべき)努力はそれで十分だと、私たちは単に思うだけ(でよいの)です」というような意味の英文にしました。
 "different from one another"という形容詞句を、今回私は多用しました。これは、”different from each other”(「二人がお互いに違う」)とは違って「3人以上がお互いにそれぞれ違う」という意味を表現します。なお、”come into flower”は「開花する」という意味です。また、”that's a good enough effort”という英語表現は、「努力はそれで十分です」という意味の文になると思います。
 2番の歌詞の英訳は、過去の事実の翻訳なので、それほど難しい表現は無かったと思います。ただ、時制(tense)を気にしていないと、英語の場合は前後関係が理解しにくくなるので注意が必要です。なお、「困ったように笑いながら」は”making a bitter smile”と表現し、”ずっと迷ってる”は、”had been at a loss to choose the best flower”と具体的な表現にしてみました。
 また、’What is more’という語句は、『その上に』とか『おまけに』という意味の慣用句です。’besides’と同じような意味・用法で、直後の文に挿入的な意味を付け加えます。”what is more , ... but ...”で、「その上さらに〜なのだけれども〜なのだ」という感じの表現になると思います。
 そしてまた、「小さい花や大きな花/一つとして同じものはないから」という、原曲の日本語歌詞フレーズは、”You can see big flowers with little flowers/All of these flowers are different from one another”と英訳してみました。ここで、『小さい』と『大きい』は、普通は’small’と’large’ですが、曲の内容を考えてみると、単に花の大きさだけではなく、それを見る『人の気持ち』も入っていると考えて’little’と’big’を使いました。
 最後に、この曲全体から、何を受けとめることができるかを、私なりに考えてみたいと思います。そのためのキーワードの一つは、「優劣を争う」という’compete’という言葉にあると思います。人それぞれが特別にオンリーワン(’the only one’)なので、もともと優劣を争うことなど、お互いにはできないはずなのです。にもかかわらず、私たちみんなが、本来無用な争いごとをして1番になろうとする。そのことに対する批判が感じられます。
 これは、私たちみんなに、過度な欲望があるために、他人(ひと)を傷つけずにいられないのだ。だから、仕方ないのだ。という考えがあるからだと思います。弱者ほどつぶされる、という考えなのですが、結局、私たちのほとんどみんなが傷ついてしまうわけです。
 私なりに考えてみるに、この『世界に一つだけの花』という曲は、単に『個性の尊重』ということを歌っているのではないと思うのです。私たち一人一人が違うのは、それぞれに個性があるからだと言えます。確かにそうなのですが、私たち一人一人が、お互いのそれを理解し受け入れようとしても、どうしてもできないということがあると思うのです。自らの尻尾(しっぽ)にかじりついた蛇の例えがあるように、私たち一人一人に個性があるかぎり、そうならざるを得ないのも事実です。従って、もう少し拡張解釈して、私は次のように考えています。実は、この曲は「基本的人権の尊重の、そのやり方」を教えてくれている、と考えてみるのです。
 『基本的人権の尊重』というと、日本国憲法に記されているあれか、と気づく人が多いと思います。けれども、「基本的人権って、そもそもどういうことなのか。」とか「それを尊重するって、どうしたらいいのか。」とか「『基本的人権』なんて難しい言葉は意味がわからないから、憲法を改正して、なくしたほうがいいんじゃないか。」と考える人も、少なくないと思います。
 それならば、『基本的人権』という言葉の意味がわからない人は、「『人権』が軽視あるいは無視される人間社会」を想像してみてください。おそらく、この言葉の意味を正確にとらえていなくても、ある程度の現実的な想像は誰でもできると思います。
 その社会では、その秩序の維持を名目にして、あらゆる差別がまかり通ることでしょう。男女差別、上下差別、弱者の差別、学歴や経済格差による差別などにより、いじめの行為が当たり前になって、私たちの大多数が傷つくような世の中になってしまうことでしょう。他人の異なる立場や意見は、誰の耳にも一切(いっさい)届かず、自分勝手な人間の言動ばかりが横行するような、そんな世の中になってしまうことでしょう。
 それでは、どうやって「『基本的人権』を尊重する」のか、それを実際的かつ具体的にどうやって実行していくのかを、誰もが知りたいと思うことでしょう。例えば、妻子がいるお父さんの立場を考えてみることにしましょう。戦後の日本、あるいは、現代の日本では、家族に厳しいお父さんは少なくなりました。どちらかというと、家族(妻子)に対して甘い態度をとるお父さんが多くなりました。民主主義の世の中では、奥さんや子供の意思が尊重されて、奥さんや子供中心の家庭が普通になりました。
 でも本当は、家庭サービスで奥さんや子供を甘やかすことが、民主主義の世の中を作ることだと、現代のお父さんに思ってもらいたくはないのです。家庭であっても会社であっても、女性や目下の者を差別しない、つまり、セクハラやパワハラとして訴追されるような虐待行為をしない、そういう人間関係が本来求められていたのです。
 家族一人一人のことで気になることがあったならば、家族一人一人と直接対話をする勇気を持って欲しいのです。「子供は、言葉で言っても、言うことを聞かない。」という話は、私もよく耳にします。けれども、世のお父さん方は、大人なのだから、大人の対応をしてほしいのです。体罰という方法にばかり依存せずに、子供自身の頭で考えさせて、その心に善悪の判断をさせる方法はいくらでもあります。それを面倒くさいと逃げているのは、大人の怠慢です。
 いろいろ書いてしまいましたが、(他人の)人権を尊重するということは、相手の我がままを我慢したり、相手を甘やかしたりすることでは決してないことを、理解していただけたと思います。むしろ、その代わりにするべきことがあると思います。相手の異なる立場や意見を、耳で聞いてあげるだけでもいいのです。そして、相手と異なる立場や意見だからといって、その優劣を争って、相手を凹(へこ)ませたり、中傷したり、軽蔑したりしないことです。
 従って、この『世界に一つだけの花』という曲の歌詞に語られている、その考えや意識を持って、他人(ひと)に接することは、人間として大切なことと言えます。それこそが、『基本的人権の尊重』を具体的な場面で行う上で大事な考えおよび意識になると、言えると思います。そうすれば、立場や意見の異なる相手を差別したり、苦しませたりすることはなくなるはずです。つまり、人間として、何をどう尊重すればよいかが、つまり、その尊重のやり方が理解かつ実現できるというわけなのです。