『若者の常識』を洗濯したく候

 「新型コロナの感染症にかかっても、若者は軽症で済む。」とか「無症状者あるいは軽症者として療養していた。幸いにして、重症化のリスクを逃れて回復した。一回かかったので、免疫ができたし、この感染症を経験してみても、大したことはなかった。」とかと、のたまっている若者に対して、私の知っている真実(?)を教えてあげたいと思います。坂本竜馬じゃないですけれど、病院で命の選択にかけられる前に、今のあなたがた若者の常識を洗濯して、きれいに洗ってさしあげましょう。
 まず、なぜ年端(としは)のいかない子供が、はしかにかかって生き残った場合に、はしかに対して一生ものの免疫ができるのかを説明いたしましょう。(こんなことを教えてくれる大人は、滅多にいないので、是非お読みください。)
 一説によると、ヒトの子供の体は、発達がいちじるしく、その勢いがもっとも大きくなる(ピークになる)のが16歳であると言われています。その16歳以降は、徐々にその勢いが弱っていき、私たちは大人の体になるわけです。そして、その個体の総合的な体力は、25歳前後で最盛期をむかえます。それ以降は、ヒトの体の発達は、折れ線グラフで見るところの右下がりに転じます。つまり、これまでの身体的能力を精神的にカバーして最善を尽くしたとしても、それを維持していくのがやっとだとも言われています。
 このようなヒトの体の発達過程で、子供がはしかのようなウィルス性の感染症にかかることには、特別な意味があることがおわかりでしょう。体内の抗体機能も、まだ発達途上で(悪く言えば、未発達で)麻疹ウィルスとの闘いに負けてしまえば、容体が急変して、あの世へ旅立つ子も少なからずおられます。けれども、その闘いに勝って生きのびた子供は、その体の抗体機能が憶えていて、はしかの免疫となるのです。もちろん、感染症に勝っても負けても体にダメージが残ります。しかし、子供の体は、発達途上にあるため、その『体の発達の勢い』が体のダメージを残さない方向に働くと考えられています。
 一方、大人の体になってしまうと、残念ながら、その『体の発達の勢い』が衰えてしまいます。だから、大人になって、はしかなどの感染症に初めてかかると重症・重篤化して、たとえそこから回復できても、合併症や後遺症に苦しまされることとなるのです。
 これでおわかりのことと思いますが、20代の若者の皆さんは、すでに『大人の体』です。あるいは、ヒトの体が『大人』として完成しているのだから、感染症なんかに負けるわけなどないと考えている人もいるかもしれません。しかし、今の世界の現状に目を見開いてほしいと思います。どんなに多くの『大人』がこの感染症に悩まされていて、死に至っている人も出ているのかを考えてみてください。
 普通に考えてみても、若者と呼ばれている20代前後の人は、すでに大人の体になっていて、それまでの子供の体ではありません。たとえ、心は子供のままでいられても、普通、体は確実に大人になっています。新型コロナウィルス感染症に本当にかかっていれば、重症・重篤化するのが当たり前です。何の不思議もありません。自らの呼吸で吸い込まれる新型コロナのウィルス量が、体内の抗体の量を上回れば、ひとたまりもなく残念な結果(リスク)になることを知ってほしいと思います。