モロッコインゲン豆に恋!?

 私は女性に優しすぎるのかもしれません。だから、いまだに結婚ができないのかもしれません。それは、『フーテンの寅さん』の映画のようなものかもしれません。しかし、今回はガラッと視点を変えて、人間の女性以外への恋をつづってみたいと思います。

 そもそもの馴れ初めは、こうです。昨年の秋、私はパスタを鍋で茹でていました。その時に、何となく「簡単にタンパク質をとりたいな。」と思いました。そして、近くの農産物直売所で、一袋100円のモロッコインゲンを見つけたのです。その食べ物は、薄緑色のさやの中に未熟な豆がいくつも入っていました。そのさやと豆が、粘膜に優しくてヘルシーなのです。滝沢カレンさんの『美食遺産のコーナー』みたいな言い方になってしまいましたが、その時に合理的なある方法を考えつきました。

 それは何かと申しますと、パスタを鍋で茹でている最中に、爪を取ったモロッコインゲンを丸々投げ入れて、パスタと一緒に茹でてしまうという方法です。そうして茹で上がったパスタとモロッコインゲンにトマトケチャップなんかをかけて一緒にいただくというわけです。しばらく、その方法で食事を作ることに何回かハマっていました。

 今年は、春先にキュウリの苗を購入したものの、それを植える直前に、急な霜で全滅させられてしまいました。キュウリの苗を植える場所が、そのために空いてしまいました。そこで、急きょモロッコインゲンの種を買ってきて、そこで栽培することにしました。キュウリのたな、すなわち、きゅうりの栽培ネットはそのまま使えそうだし、きゅうりの栽培期間と重なるので、丁度いいと思いました。

 種を土に植えて55日以降に、小さな白い花が無数に咲いて、それから2週間くらいで、りっぱな薄緑色のさやが垂れ下がるようになりました。それらを収穫して、長さをそろえて袋に詰めて、その重さを基準に合わせて、農産物直売所に出荷しました。それを何度かやっているうちに面倒くさくなって、その出荷をやめて、自分で食べることにしました。

 ところが、今年になってパスタの値段が上がってしまったので、ご飯のおかずとして考えることとなりました。ご飯すなわちお米と一緒に炊いて作るわけにはいきません。そこで考えたのが新メニューです。ハサミなんかで切断したモロッコインゲンをカレーの具にして、モロッコインゲン・カレーを作って、ご飯にかけて食べるというものです。モロッコインゲンのさやと豆の独特の食感と味覚を引き出す、不思議なカレーライスが出来上がりました。これは、結構長期間ハマりました。最近は、市販のカレールーの扱い方が簡単になったため、レトルトカレーの手間とそれほど変わらないと、私には思われました。

 そのうち、ツルからインゲンのさやを収穫するのが面倒くさくなりました。しばらくそれを放置していました。すると、さやがしぼんで枯れてしまいました。もうこうなっては、インゲンのさやは食べられません。けれども、そのさやの中で熟した豆は収穫することができます。それを水に浸しておいて、鍋の水の中に入れて、火をつけて煮ます。後でお好みの味付けをして、煮豆として食べられます。

 モロッコインゲンは、栽培上、樹の勢いが突然弱って枯れてしまうことがありますが、それとは逆に、しばらく生(な)り続けることもあります。その意味では、大豆やその未熟な豆(枝豆)よりも、栽培しやすく、収穫しやすい作物です。枝豆などよりも、手っ取り早く食(しょく)にありつきたいと思う人は、是非モロッコインゲンを栽培して欲しいと思います。ただし、きゅうりネットのような設備があることがその前提条件の一つではありますが…。

 今回私が思い切ってそれを栽培してみたのは、畑(つまり農地)でタンパク質が作れるからです。タンパク質というと、肉や魚や鶏卵などの動物性たんぱく質を想起しますが、畑のタンパク質と呼ばれる大豆をはじめとして、豆類も本当は無視できないと思います。勿論私はベジタリアン菜食主義者)ではありません。しかし、大豆の匂いや味に拒絶反応を起こさない日本人だからこそ、腸が長くて植物性栄養素の消化吸収に長(た)けている日本人だからこそ、植物性タンパク質の消化吸収を改めて考えてみてもいいのではないかと思います。

 もう一つの理由は、自給のしやすさにあります。小規模の栽培で作るのならば、大豆よりもお得です。ツルにインゲンのさやが生(な)りだすと、しばらく収穫できて食べられます。家庭菜園のように食物の自給を目的とするのならば、枝豆(もしくは大豆)もいいけれど、インゲン豆にも挑戦してみてはいかがでしょうか。