庶民の和食

 和食と言うと、最近では懐石料理のような高級な『おもてなし』を連想しがちです。けれども、そうではない場合もあることを、今回私は述べてみたいと思います。それは、私の仕事が忙しくて夜も働かなければならなかった時期に、地元のスーパーマーケットに夜食を買いに行ったことが、きっかけでした。
 通常、日本の一般家庭では、お米は白米、ご飯そのものには何も味付けをしないで食べるものとされてきました。私も、子供の頃からそのように教え込まれてきたような気がします。そのために、お米よりもパンが好きになり、いわゆる日本人に多い『お米離れ』になったように思われます。
 ところで、そのスーパーの惣菜コーナーでは、おにぎりやいなり寿司などが、閉店一時間前で値下げされて売られていました。それらの食品表示を見ると、おにぎりには「塩飯」と、いなり寿司には「酢飯」と書かれていました。つまり、それらはご飯に味付けをしたものであることがわかります。
 私の記憶では、ご飯に味付けをしたものは、主食ではなくて、『おやつ』として食べさせられていたような気がします。いなり寿司にしても、巻き寿司にしても、何かのお祭りやお祝いごとに、お年寄りから食べるようにすすめられて、それで食べていたような気がします。赤飯なんかもそうでした。
 しかし、今になって考え直してみると、どれもご飯であってお米であったわけです。しかも、いなり寿司に至っては、油揚げのもともとの原料が大豆であることを考えれば、三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪)が含まれた、つまり、栄養バランスのとれた、肉を使わないヘルシーな食べ物で、しかも、値段の安い食べ物であることは間違いありません。
 お米と大豆を国内で自給できるとすれば、是非とも、アメリカ合衆国で流行らせたい食べ物の一つであると言えます。オバマ大統領やケネディ駐日大使とかに、この庶民の和食を教えてあげられたらよろしいかもしれません。