女の子と思っていたのに…

 私がその『マスター・ヘア』の肖像画を初めて見たのは、中学生の頃に見た小学館の百科事典『世界の美術 中世・近代編』中のある1ページでした。その後、ジグソー・パズルになっているのを買ったことがありました。しかし、私は、つい最近まで、この肖像画が幼い少女を描いたものとばかり思っていました。
 そう言えば、ちょっとおかしいな、と疑問には思っていました。この絵画のタイトル"Master Hare"を日本語に訳すと、「ヘア君」または「ヘア坊ちゃん」となるので、変だなと私はずっと思っていたのですが、まさか絵のモデルが少女ではなかったとは思いませんでした。"Hare"とは、「野ねずみ」のことで、さしずめ「野ねずみ坊ちゃま」と召使いなんかにばれていたようです。それが、この絵画のタイトルになったようでした。
 ネットでこの肖像画の解説を読んでいくうちに、このモデルが「女装の少年」であることがわかりました。西洋の某地方では、少年の頃に、少女の子供服を着せる習慣があったのだそうです。それはフランシス・ジョージ・ヘアという男性が10歳の頃の肖像画だそうです。イギリスの肖像画家レーノルズが描いたもので、フランスのルーブル美術館で観ることができるそうです。
 まぎらわしいなあ、とは思いましたが、子供の肖像画なのだから、男の子でも女の子でもどっちでもいいかな、と結局私は思いました。男の子だとすると、あの髪型や肌の露出の仕方には、画家のレーノルズの作為があったのかもしれないと思いつつも、やっぱり私はこの絵を見てしまいます。きっとそれが、この絵の持っている魅力なのでしょう。