架空の人物たち (その3) 『黒田さん』

 私がおそらく初めてテレビで『黒田』という苗字の人物を見たのは、実写版『ジャイアントロボ』のゲストキャラの『黒田君』だと思います。主人公の少年の同級生なのですが、悪の組織のれっきとした悪い少年でした。また、後に戦隊もので女優の黒田福美さんが悪の女王として、主人公の正義の味方を崖の上から見下ろして物言うのを毎週見ていました。どうもテレビドラマで扱われる『黒田』という苗字には、ダーク(dark)で悪のイメージがあって、昔から悪役の苗字に使われることが多かったようです。
 ところが、ある時期から微妙にイメージが変わってきました。私は、紀宮(のりのみや)さんの隠れファンで『皇室日記』などのテレビ番組で、何処何処へ訪問されましたという報道を楽しみにしていました。そして、あの黒田さんとご成婚されてから、私の周囲でもちょっと変化がありました。その頃の私自身に特に変化は無かったのですが、会社に出勤すると私の苗字を知っている人たちから、会うたんびに「このたびは、おめでとう御座います。」と言われました。私自身は、あの黒田さんと何の関係も無いのに、そう言われてみると、何かうれしくなってしまいました。
 それ以降、『黒田』という苗字のイメージが良くなったようです。例えば、『ごくせん』のやくざの親分は黒田ですし、最近では『外交官 黒田康作』というのもありました。『小公女セイラ』の黒田セイラもそうですが、最近のテレビドラマに見る『黒田』という苗字の人物には、気品があって強いところがある(悪く言えば、強情なところがある)役どころが与えられるようになりました。ただの悪役の一つから格上げされたので、私としてはちょっと気分が良くなりました。
 ところで、『外交官 黒田康作』をテレビをつけて見ていると、時々テレビの中で誰かが「黒田さん」と呼びかけるシーンがありました。私は、「はい。何でしょうか。」としばしばそれに反応して答えてしまいました。テレビを見る人の勝手かもしれませんが、私はそれでテレビを楽しんでいました。