無茶な提案に違いありませんが…

 先日の豪雪でつぶれてしまったパイプハウスの解体作業のために、先週からJA職員の方々が有志で現場にいらっしゃっています。今日なども、日曜日で通常は休日であるにもかかわらず、平日が忙しいということで、10人くらいのJA職員の方々がいらっしゃいました。聞いてみたところでは、休日手当は出ないそうです。私は、頭が下がる思いでした。
 私の所のビニールハウス(あるいはパイプハウス)は、もともと地元のJA支部から借りている物でして、毎年レンタル料を決まった金額で支払っています。つまり、私自身の物ではなく、地元のJA支部の物なので、JAがそれを解体する決定を下した場合、当然私はその決定に従わなければいけません。私一人で解体作業を進めていたため、そのことを念頭に入れていないと周りから思われていました。私の行動を独断的と見なして、心配して忠告する人さえもいました。
 実は、パイプハウスの支柱には、地面の下に沈下防止のための強力な金具が埋まっているため、重機の物凄い力が無いと、とても人間一人の力では、引き抜くことができません。この点に関して、JA指導員の方の考えでは、パイプハウスの支柱を沈下防止の金属ごと引き抜いて、とにかく更地(さらち)にするという方針であったので、私はそれに従いました。現実世界では、個人の意向よりも、地域の意向を優先することが大切な場合もあるのです。
 また、私は、今日もそうですが、そうしたJAの職員の方々に混じって、一緒に土方(どかた)のような作業をしていました。いくらビニールハウスの設備を借りているからといって、JAの有志の方々にそうした作業を任せっきりにするのはいけないと思ったからです。たとえそれが土方の作業であっても、何か他人(ひと)の役に立てる、お手伝いをすることは重要だと思います。それに、その場所を継続して今年も利用させていただけるのであれば、彼らの作業に協力することが当然だ、と思いました。
 そのような肉体労働を経験する中から、私は、かなり無茶な提案を考え出しました。2020年開催予定の東京オリンピックに向けての、あの問題についてです。それに向けて建設しなければならないものがあるにもかかわらず、日本人だけでは労働力が足らず、外国人労働者を沢山呼ばなければならないという、あの問題です。私は、この問題の本質に、おかしな点を感ぜずにはおれませんでした。日本人だけですべてをまかなえ、とは私もさすがに言えませんが、何かおかしな気がします。
 もしも私が、そのオリンピックに参加する選手の一人だったら、その問題を知って、こう思うことでしょう。「私にできることは何か無いのか?」と。すなわち、人手不足の問題のために一肌脱ごうと考えると思います。それで怪我をしたり事故を起こしてはいけませんが、競技場などのオリンピック関連施設の建設のために柱の一本でも立てることに協力することができれば、精神と肉体の強化につながると思いました。効果はそれだけではありません。自らが建設に関わったオリンピック関連施設で今度は、自らがそれを利用したり、自らが競技をするわけです。その気分は格別であり、きっと士気が上がると思います。
 スポーツマンは、自らの練習と、その能力を強化することばかりに忙しくて、そんな余裕なんかあるはずがない、と誰もが言うはずです。しかし、その論法は、「スポーツなんて遊びじゃないか!スポーツなんか、やってもムダだ。それより働け。農作業しろ!生きることは働くことだ。遊ぶことではない!」と言っていた昔の日本人とどこか考え方が似ていると思います。まるで国家は、メダルを獲得するためのマシンを作っているかのようで、全く人間味が感じられないのです。オリンピックに参加する選手たちには、見せかけだけで国を背負ってもらいたくはない、という願いが私にはあるのかもしれません。
 もしも現在の日本でオリンピックを本当に成功させたいのならば、それくらいの自主性が、現在の日本人にないと無理なのかもしれません。それゆえに、日本人選手に土方を経験させるという、無茶な提案をさせていただきました。