ちょっと残念ではあるけれど…

 せっかく今、東京の実家にいるうちにと思って、御茶ノ水秋葉原に行ってみました。趣味として、コンピュータ関連の書籍を探すのが目的でした。というのは、私の実家には、今は使わなくなった昔のパソコン以外にも、シャープやカシオ製のポケットコンピュータやNEC製のハンドヘルドコンピュータなどで壊れていないものが残っていたからです。また、TK−85というNEC製のワンボード・マイコンもありました。しかし、それらに関連した書籍は一部紛失していて、今は見ることができなくなってしまいました。
 そこで、数年前にあの本はあの本屋さんで見かけたけれど買わなかった、ということを思い出して、御茶ノ水秋葉原に行ってみたのです。JR御茶ノ水駅を降りて、明治大学の新キャンパスのビルを初めて実物で見ました。そう言えば、三十年くらい前から、私が飯田橋や市ヶ谷に通っていた頃は、御茶ノ水駅に途中下車して、神田駿河台(もしくは、神田神保町)の本屋さんを見に行ったものです。社会人になってからも、これまで何度か本を探しに(と言っても、マジメな本ばかりではありませんでしたが)御茶ノ水に行ったことはありました。そうした場所があの頃と少しも変わらない点は、立ち食いソバ屋さんがあることと、楽器を扱うお店がいくつもあることでした。
 今回の私の努力が足りなかったせいもあるとは思いますが、コンピュータ関連の書籍は三省堂書店でしか見つけられませんでした。その書店では、書籍の数は多かったのですが、私の持っているハードウェアが古すぎるようで、それに見合った内容の本はありませんでした。さらに表通りから路地を入って、東京堂書店のあたりまで行くべきだったと思いますが、今回はそこまで考えが及びませんでした。
 そこで、御茶ノ水で探すのはあきらめて、秋葉原に行ってみることにしました。神田岩本町まで歩いて行くと、書泉ブックタワーがあって、コンピュータ関連の書籍のコーナーがありました。が、それとて数年前と比べれば、コンピュータ関連の書籍の置かれているスペースが縮小されていました。しかも、比較的新しい書籍が多いように(私にとっては)感じられました。それではと、同じ秋葉原の、某家電メーカーさんのコンピュータ館みたいな建物だった所に行ってみることにしました。ところが、そこは昨今のアニメ・キャラクター・ブームでその建物の中味が全く様(さま)変わりしていました。わずかに、その建物のすぐ外に、私の知っている昔ながらの幾つかの小さな店が、スマホの空(から)ケースを売っていたり、安い電子部品や電子製品や半田付けの道具などを売っていました。お店の中が静かでキレイであっても、それらの古いお店には、若者が多く訪れていた昔の活気など、今は少しも感じられませんでした。
 アニキャラ関連の商品って今の若い人たちにそんなに売れているのかな、と考えの古い私はいぶかりながら、JRのガード下に沿って歩いて行って、秋葉原電気街の小さな店舗が並んでいる場所にたどり着きました。私は、今でも変わらないその場所を目にして、そこでやっと安心して、ほっと一息つくことができました。パーソナル・コンピュータを中心として、電子部品や周辺機器や関連書籍や関連小物が売られていた頃の秋葉原がなつかしく、今のそれらの場所が完全に様変わりしてしまったことを、私はちょっと残念に思いました。
 けれども、それは仕方のないことなのでしょう。いつの時代でもそうでしょうが、どんなお店でも、お客の買ってくれるものを置いておかないと、経営が赤字になってしまうからです。時代遅れのコンピュータ関連書籍を探していた私は、さしずめ現代の浦島太郎の気分を味わっただけなのかもしれません。