放射線と原子力を科学的に説明した本に出会う

 地元の本屋さんで見つけたのですが、このような本が早くも今年の5月に出版されていました。それは『早わかり!(図解)知っておきたい!!放射能原子力』というタイトルの本でした。
 この本の表カバーには、「正しく知ろう 放射能のこと」「見えない知らないから恐い?放射線の正体」といったサブタイトルが書かれていました。また、「原子力発電のしくみを知ろう!」「シーベルトや暫定規制値などの意味を知る」とか「一気に解決!みんなが知りたい疑問66 放射性ヨウ素が検出された水で、お風呂やシャワーは大丈夫ですか?ほうれん草以外の野菜は大丈夫なの?どうすれば放射線は防げるの?」とかいった細かな文字が書かれていました。
 この『みんなが知りたい疑問66』は、本の裏カバーにも「マスクで放射性物質を防げるか?」「被ばくすると、他人にうつる?」「なぜ子どもほど放射線の影響を受けやすいのか?」「昆布やワカメを食べていれば被ばくしても大丈夫になる?」などなど、いっぱい文字が書かれています。それらの身近な疑問に対しては、本文の第3章で一つ一つ解答しています。
 第1章では、放射線の正体を明らかにしつつ、放射線に関連する知識を一つ一つ説明しています。核分裂や自然放射線、人工放射線とは何か、放射性物質とは何か、シーベルトやベクレルとはどういう単位か、暫定規制値や通常放射線量って何か、放射線を浴びたら人体にどんな影響があるか、などについて解説がされています。私が特に注目したのは、放射線には種類があってその実体がそれぞれ違っていて、それぞれ透過力などが違っていることです。本当のことを言うと、私もまた、この本に書かれているような放射線についての専門知識を部分的にしか知りませんでした。ですから、この本を読んでかなり勉強になりました。
 第2章では、原子力発電のしくみや、日本の原子力開発と発電所の現状について、わかりやすく説明されていました。こうした説明は、絶対必要です。原発のことを何も知らないで、テレビのニュースを見ただけで恐怖感や不安感をあおられた人たちには是非読んでもらいたい内容が書かれています。科学技術というものが、それに疎(うと)い人たちにとって、マッド・サイエンティスト(世間を知らない科学者)の好奇心や道具でしかないと思われてしまうことは、大変残念なことです。私たちは、過去にそれらの科学技術の恩恵を受けて、経済を成長させてきた歴史を(結局、望まなかった歴史や結果かもしれませんが)忘れてはいけません。しかし一方、こんな小さな国にとって、原子力エネルギーをあらゆる面から牛耳るにはちょっと荷が重かったようです。日本国民の大多数が原発に恐怖や不安を抱いてしまった根本的原因はそこにあったと思います。
 この本を読んでみればわかることですが、放射線原子力に関する科学の技術と知識は、世界で最先端のものです。学校教育でここまで学ぶことは無かったような、科学的な知識と技術ばかりです。そこに、私たちの盲点がありました。学校で学ばなかったことは、身近には存在しないと、私たちは思っていました。学校教育で教えてくれなかったことは、日常生活には関わりないと、勝手に解釈していました。しかし、それは私たちの勘違いに過ぎませんでした。
 ところで、私が小学生の頃には、キュリー夫人の伝記を国語の時間に学びました。学校の図書館にも、キュリー夫人の伝記本が必ず置いてありました。説明するまでもなく、キュリー夫人放射性物質を発見した先駆的な科学者でした。
 キュリー夫人とその夫のピエールは、二人とも放射線の研究者で、放射性物質から放射線を長期間浴びて研究を続けました。一説に、この二人とも長期間の放射線の被ばくで体がおかしくなって寿命を縮めたとも伝えられています。(夫のピエールは、荷馬車に轢かれた事故死であると実際には言われていますが…。)それに比べて、現代医療の放射線技師は、勤務時間内に浴びる放射線量に注意が払われていて、規定以上の放射線量を浴びないように休日や勤務時間が決められているそうです。
 このことから、放射線原子力が必ずしも安全だとは言えませんが、ちゃんとした知識や技術がわかっていれば、私たちはキュリー夫人のように無制限に放射線にさらされることにはならないのではないかと思います。科学の知識や技術が蓄積されて初めて、私たちは未知なる危険や恐怖から救われる道が拓けるのではないのでしょうか。何もせずに立ち止まってばかりいても、危険や恐怖にさらされていることは変わらないままかもしれません。