情けは人のため?

 「情けは人のためならず。」という諺があります。私の持っている小学館の国語辞典卓上版によると、「人に情けをほどこせば、必ず自分もよい報いを受ける。」のだそうです。他人に情けをかけるのは、他人のためというよりは、自分のために結局はなるのだよ、ということではないかと思います。
 さらに拡大解釈してみると、「良いことをしても悪いことをしても、結局何らかの形で自分自身に返ってくる。」ということになります。人のために頑張ったからといって、必ずしも見返りがあるとは限りません。それを期待せずに頑張るには、それだけの覚悟や決意が必要です。ならば、いっそのこと自分自身のためとするならば、悔いは無いはずです。
 「他人のためにではなく、自分のために」とはどういうことでしょうか。私は、このことをフジテレビ・ドラマ『めだか』の目黒先生にならって、次のように考えてみました。誰でも心の中に、何らかのもやもやを抱えているものです。それは、不安であったり、心配であったり、不満であったり、あきらめであったりします。その心の内にくすぶっている『もやもや感』を解消したくて、何かをせずにはおれない気持ちになります。ですから、それは人のためと言うよりは、結局自分自身のためなのです。自分自身のために、もやもや感を晴らすことが、生きることにつながるのです。
 現実は複雑ですし、人それぞれ立場があります。それに、公のために頑張っている人たちを悪く言う気は私にはありません。何が言いたいのかというと、大切なことについて私たちは思考停止をしてはいけないということです。もしも自らの意思に反することに自らが従っていると気づいた人がいたならば、誰のための情けなのかを考えて欲しいのです。そのことが、結局その人自身を救うことになると思います。