東京に帰省する!?

 毎年のことですが、私は一年に一回、年末年始は東京の実家へ帰ります。以前は高速道路を車で行き来していましたが、ここ何年間かはバスで上田駅に行き、新幹線を利用して上野駅で地下鉄に乗り換えて、東武線の最寄り駅で下車するパターンで実家に帰ります。車と比べて、新幹線を利用する方が、楽に移動できますし、かかる金銭にもそれほど差はありません。高速道路を車で運転する時のストレス感から解放されるだけでも、新幹線での移動は価値があると、私は思っています。
 私の帰省は、都会から地方へ帰る普通の人達とは移動の方向が逆になります。よって、新幹線の車内の自由席は、満員ではありませんが、かといって、空席ばかりでもありません。今では、通勤・通学のために普通に新幹線を利用している人達も少なくありません。街中で見るのと変わらぬ服装で乗車している人がほとんどです。昔のように、重装備で大きなリュックや荷物を持っていたり、山登りをするような格好をしていたり、という人は、めったに見かけなくなりました。服装も、カジュアルというか、軽装の人を多く見かけます。
 もちろん、長野県にいると関東地方よりも寒いですから、長野県にいる間だけは少なくともオーバーコート一枚くらいは余計に羽織っていないと、今の時期は寒さに耐えられないと思います。
 私が、年末年始に帰省するのには、いちおうそれなりのわけがあります。例えて言うならば、単身赴任で地方に働きに行っているサラリーマンのお父さんとそんなに変わらないのではないか。一年に一回くらいは実家に帰らないと、顔を忘れられたり、自分の部屋がなくなっていたりして、実家にいられる場所がなくなっていたりはしないか、と気になったりするものです。
 それに、長野県の北部と中部は、冬は粉雪が降って、すごく寒いのです。私のいる上田地区は、実は雪が少なく、冬は天気のいい日が多いのですが、それでも風が冷たくて、朝夕はかなり気温が下がります。そんな時に、東京の実家へ帰ると、同じ冬でもいくらかは暖かく感じられます。夏に避暑地と言われる逆の、寒さを避けて暮せる地が冬の東京なのです。
 しかしながら、長野と比べて東京は、誘惑の多い街です。私は、40代の初めまで東京で暮していたとはいえ、実家の生活が余りに質素であったために、そうした誘惑に関わることが少なかったようです。せっかく東京に住んでいたのに、その恩恵をあまり受けていませんでした。いまになって思えば、東京でもっと遊ぶべきだったのではないかと反省しています。マイコンのプログラミングにのめり込んだり、フェッチな写真やビデオを買うくらいの、オタク趣味までで終わってしまって、惜しいことをしたと思いました。
 でも、今の私は、いい年ですから、そうした誘惑に負けて、危ない世界に足を踏み入れないことが大切なような気がします。長野と比べて東京は、いろんな価値観や誘惑が多く、それはそれで魅力的ではあります。しかし、むやみやたらとそうした物事をとりいれ続けていると、いくらでもお金が必要になります。個人の消費が伸びれば、それでいいのかもしれません。けれど、そういった状況にいつまでも引きずられていて本当に幸せなのか、満足できるのかは、わからないと思います。
 そう考えると、私の母のように、東京に出てきても、他人から特別に注目されることもなく、ひそかに質素に生活を送る方が、正しい道なのかもしれません。