チェスゲームの考察

 今日の午前中に、NHK総合テレビのワールドニュースを観ていたら、戦争・軍事のトピックスばかりでしたが、特集でアメリカのニューヨークで行われているチェスパーティが紹介されていました。アメリカでは、コロナ禍の期間中に、ネット上での対戦チェスをする人が増えたのだそうです。その余波を受けて、コロナ明けの今日では、チェスゲームを楽しむ人々が増えているとのことでした。
 そう言えば、私は、中古のVAIOブックパソコンに付録で付いてきたフリーセルソリティアなどのカードゲームを、そのコンピュータを相手によくプレイします。余談ですが、トランプ(trump)というのは英語では『切り札』という意味です。だから、アメリカのトランプ前大統領は、『切り札』前大統領という実は凄(すご)い意味の名前になります。なお、私の持っている英和辞典によると次のとおりです。日本語のトランプを意味する英語は”cards”です。”play cards”で「トランプをする」。”be at cards”で「トランプ遊びをしている」。”His favorite pastime is cards.”で「彼の気晴らしはトランプだ。」という意味です。これらの”cards”はいずれも、52枚ほどのカードでひとまとまりなので、単数扱いとなります。
 話しを戻すと、最近になって、それにチェスゲームが加わりました。チェスゲーム自体は、もともとコンピュータに入っていたのですが、どうやって考えプレイしたら勝てるのか、よくわからなかったので、これまで滅多に手をつけませんでした。
 もっとも、チェスゲーム自体には、若い頃から興味がありました。チェスボードと駒を買って、(日本語で書かれた)入門書を読んでみました。また、マイコン内蔵のコンピュータチェス盤を買って対戦してみたり、UNIXワークステーションでGNUチェスプログラムを見つけてきて、MS-DOSパソコンに移植して、コンピュータと戦ってみたりしました。そしてまた、東京神田の洋書本屋さんへ行って、チェスの専門書を英語の原書で買ってきて、所々を読んでみたこともありました。それが、20代から30代にかけての、私の努力の全てでした。がしかし、肝心なことがわかっていなかったようです。したがって、どうやってゲームに勝てるのかが、どうしてもわかりませんでした。
 ちなみに私の半生を振り返ると、同じようなことは、他にもありました。高校時代の体育の時間に、サッカーをやっていた時のことです。私が子供の頃に住んでいた地域では、サッカーよりも野球が盛んで人気がありました。だから、私とその同級生は、野球ではどうやってプレイしたならば勝ちにつながるかがわかっていました。しかし一方、サッカーとなると、どうやってプレイしたならば勝てるのかがよくわかりませんでした。だから、体育の授業でせっかくサッカーをやっても、ボールを敵側に蹴り合うことに終始してしまいました。結局、ボールが双方のゴールネットを揺らすこともなく、授業時間が終わってしまいました。私とその同級生は、何でサッカーが面白いスポーツなのかを理解できずに終わってしまった人が多かったようです。
 私の、チェスゲームに対する興味もそれと同じようなものでした。多少の興味はあっても、どうやってプレイしたらいいのかわからなくて、結局途中で投げ出してしまう。勝つためのゴールに向かって、考えあぐねてしまう。もったいない話ではありますが、誰にでもそういう経験をすることはよくあることなのかもしれません。
 この年末年始に、たまたま私は、VAIOブックパソコンでチェスゲームを立ち上げてしまいました。フリーセルソリティアをやろうとして、誤って立ち上げてしまったのです。それで仕方なく、コンピュータとチェスの対戦をするはめとなりました。以前にも、フリーセルソリティアの代わりに、時たま対戦したことはありましたが、勝ち方のわからない私の負けが続いていました。ところが、今回初めてコンピュータと対戦して勝つことができました。おそらく、まぐれでしたが、勝ったことが余程うれしかったのでしょう。その後は連勝続きとなりました。
 これまでの私がなぜ勝てるようになったのかを、考えてみることにしました。コンピュータ側の強さをレベル2のままで続けていました。そこで、レベル10まである強さを1つ上げて、レベル3にしてやってみたところ、またまた連勝続きとなりました。そこで、さらに考えてみることにしました。すると、いくつかの戦うコツを心得ていることに気がつきました。まず、日本の将棋と比べると、西洋のチェスは、1ゲームの所要時間と手数が短いので、先が見えない手が少ないということです。
 将棋の序盤にあたるオープニングゲーム(opening game)では、将棋と同じように定跡があります。そのいくつかを知っていると、序盤で不利になることはほとんどありません。各駒の配置、すなわち、フォーメーション(formation)を部分的に知っているだけでも、全然違います。次に、中盤で心得ることは、駒の損得です。日本の将棋のように、取った敵の駒を捕虜にして、寝返らせて使うことはできません。しかし、相手と駒の取り合いになる時に、少しでも位の高い敵の駒を取ることができれば、味方の戦力の合計が相手のそれを上回って、有利が確定します。日本の将棋よりも、その影響がはっきりと表れて、わかりやすいと言えます。そして、終盤になると、盤上の駒数が減って、生き残った駒の効き筋が多くなって、その威力が倍増します。そのことを利用して、王手にあたるチェック(check)、あるいは、詰みにあたるチェックメイト(checkmate)に持っていくことがコツです。
 今回私は、コンピュータチェスのかなり弱いレベルで、それらのコツに気がついて、勝つことができました。日本の将棋と比べると、ゲームとパズルの要素がコンパクトにまとまっている感じがします。ある意味では、日本の将棋と比べて、習得しやすいかもしれません。たとえば、体力に限界を感じている人であっても、いくつかのコツさえつかめば、低いレベルのコンピュータチェスに勝てるかもしれません。あと、もう一つだけ、重要なコツを伝えておきましょう。日本の将棋と西洋のチェスとは、似て非なるものだと思います。だから、将棋のことは、チェスの競技中は、すっかり忘れておくといいかもしれません。