私の本業 販売契約出荷を今年も終えて

 今年も先月末日までの二ヵ月間、きゅうりの販売契約出荷をやっていました。それを今年も無事に終えることができて、一安心することができました。地元のJAと卸し市場(いちば)を通して、県外の都市部の量販店向けにきゅうりをほぼ毎日1000本(約100キログラム)出荷する契約でした。今年の私の分担は、その5分の1、つまり、きゅうり200本(約20キログラム)でした。それらをほぼ毎日、地元のJA流通センターに出荷する責務を負っていました。
 一般に、農産物の契約出荷と言うと、生産者の安定収入が見込めるので、良いことばかりのように見られますが、実際にはそうとは限りません。長期間、安定供給を強いられるため、そのためのきゅうりの栽培管理や収穫・箱詰めの技術がないと、たちまち窮地に落ち入ってしまいます。仲間が助けてくれればよいのですが、その仲間も同時に窮地に立たされていたりすると、契約出荷自体が成り立たなくなって、販売してくれる量販店側から突如(とつじょ)として契約打ち切りの憂き目に遭(あ)います。その場合、販売利益の損失分のペナルティを課せられたり、来年以降の契約を打ち切られたりします。
 実際8年ほど前に、この地元の農家数軒でそのような販売出荷契約をきゅうりの品目で請け負って、出荷できるきゅうりの本数が不足して、契約の中途打ち切り事件が発生しました。それ以来、地元ではこの販売契約の請負いには慎重論が多くて、JAとしてやりたくてもできない状態がここしばらく続いていました。しかし、3年ほど前に従来のベテランきゅうり農家さんとは別に、新規就農者がここ地元では増えてきました。彼らの農業収入を安定化させるために、その販売出荷契約の請負いに再度チャレンジすることになりました。
 今年の私は、去年のきゅうりの木の栽培本数256本をさらに60〜70本増やして、320本くらいでこの仕事に臨みました。去年の出荷がギリギリの本数だったことが多かったので、その反省に立っての対策でした。しかし、今年の天候は去年のそれとは比べものにならないほど厳しくて、雨降りが続いたり、かと思うと日照りが続いたりで、きゅうりの収穫量が予定していたよりも少なめになって苦戦しました。去年と同じきゅうりの木の本数でやっていたら、おそらく途中でギブアップ(つまり、予定通り行かずに挫折)していたところでしょう。
 また、相変わらずの人手不足で、きゅうりが取れる最盛期には、手が追いつかず過剰労働になりがちでした。その対策として、毎日のきゅうりの収穫量に波(山と谷の波)がなるべくできないように、きゅうりの木の健康管理をキチッとすることが必要でした。きゅうりの木が病害虫にやられてくると、沢山のきゅうりが成ってきます。がしかし、それはきゅうりの木が断末魔の叫びをあげている状態で好ましくありません。それから二、三日すると、木の成長の勢いが急に弱って、きゅうりの成る本数が激減してしまいます。それで気がついてみると、病害虫に葉っぱがやられて、木全体が枯れだしてしまいます。大部分の木がそうなると、出荷に十分な本数のきゅうりが収穫できなくなります。この仕事が失敗に終わります。そうならないために、どんなに忙しくても、しっかりと栽培管理のための時間をとることが大切なのです。
 きゅうりの収穫は、3ヶ月以上の長丁場(ながちょうば)になることが多いため、日々無理をしていると祟(たた)ります。私自身は既に人生の最盛期を過ぎてしまったので、三十代の人たちと同じようにバリバリ働くことはできません。私自身の出来得る範囲で、仕事を続けていくしかないわけです。無理なく堅実な計画を立てることを心がけてはいますが、この仕事は天候や病害虫などによるどんな番狂わせが起こるかわかりません。致命的な失敗をしでかして、きゅうりの木を全滅させるようなことの無いように、毎日注意を怠らないように気をつけていました。