まず検査できて本当に安心なのか

 近年私は、地元の地方自治体および保健所の要請で、毎年かかりつけのクリニックで定期的に健康診断(定期健診)を受けています。その中でも血液検査では、いろんなことがデータとして出てきます。その見方を教わる時に、保健所の担当者さんによく言われることは、「検査の結果に一喜一憂しないでください。」ということでした。生活習慣病の特性として、長期的にデータを取っていないと、問題がはっきりしないと言われました。一回や二回の検査では、わからないことが多いということなのです。

 そう言われてみると、私は二十代の頃に健康診断を受けて、中性脂肪値と悪玉コレステロール値と尿酸値が高くて、尿管結石とか足の踵(かかと)の剥離骨折とかをしばしば起こしていました。尿酸値が高いことから、贅沢な食事病と疑われていました。しかし、当時の私は、毎日のように贅沢なものを食べていたわけではありませんでした。しいて言えば、働き過ぎでストレスをためていましたが、それと疾病症(しっぺいしょう)との因果関係がどうしてもつかめませんでした。当時の医学では、そこまでしかわからなかったのです。

 私は、ここ数年前まで、尿酸値を下げる薬を飲んでいました。ところが、尿酸値が下がっても、今度は血圧が少し上がって来ました。体調がすぐれず、加齢のためとあきらめかけていました。ところが、今のクリニックで診てもらっているうちに、尿たんぱくの値が陰性と陽性の境目を行ったり来たりしているのをみつけてもらいました。そこで、その値を改善する薬を処方していただいて治療を継続していくうちに、尿たんぱくの値と、高血圧値を改善できるようになりました。体調がもどって、ついでに中性脂肪の値や尿酸値も下がってくれました。結局何が悪かったかと申しますと、私の腎臓の働きが生まれつき少し悪かったのです。(これは私の個人情報ですが、今回の説明のために、あえて明らかに致します。)

 もしも、その私の体の弱点を見つけられないまま治療ができないでいたら、腎不全になってしまう運命であったことを、かかりつけのクリニックのお医者さんから告げられました。もちろんこの疾病症が完治したわけでなく、所定の薬を飲み続けて、治療を続けています。薬を断って油断をして、腎不全となった場合、透析を受けないとなりません。それは、金銭的にも時間的にも精神的にも身体的にも大変なこととして、そうならないようにと、お医者さんから絶えず警告されています。

 ところで、新型コロナウィルスの検査についてですが、本当にその検査を受けて安心できるのか、あるいは、安全になれるのかということを、専門家さんの意見や話とは別に、個人的に冷静になって、私は考えてみることにしました。ひょっとして、一般的に考えられていることは、まず新型コロナウィルスの検査をしてもらえないために陰性か陽性かわからず不安だ、ということではないのでしょうか。その検査をしてもらって陰性であることが証明されれば安心できると、期待しているだけなのかもしれません。

 しかしながら、現実的にはそうなるとは限らないことを想像していただきたいと思います。検査の結果で一喜一憂してはいけません。陰性だと検査結果で出たとしても、ヒトとして生きている限りは、感染のリスクがゼロになることはありません。ヒト対ヒト感染のウィルスであることと、感染せずにこの新型ウィルスへの抗体ができることが現時点では不可能であることが、その根拠です。陰性の検査結果に個人的に安心を得られたとしても、それは一時的なものであり、自分さえよければいいという利己的なものになりがちであり、科学的にも社会的にも解決できていないことに誰もが気づくべきです。

 それでは逆に陽性だと検査結果で出たとしましょう。(陰性の場合と同様ですが、そんなことは、なってみなければわからないと、皆さんは思うかもしれません。ならば考えないでください。ここで、私の記事を読むのをやめて結構です。それは皆さんの自由ですので、私は強制いたしません。)もし陽性の検査結果が出たとしたならば、私たちはどうしたらいいのでしょうか。お医者さんや地方自治体や保健所の指示に従うとして、今までの生活のパターンをすべて変えなければならないのでしょうか。少なくとも、陽性の検査結果が出て、どのように治療されて、どのようにこれまでの生活が保障されるのかは、全く見えません。そして、他者との格差や差別があからさまになるのは確実です。しかも、検査陽性という個人情報が、民間の検査機関で適切にセキュリティ管理されない場合は、その人の人生を一生ねじ曲げてしまう危険さえあります。新型コロナウィルスの個人情報をビッグデータとして欲しがっている誰かがいることを、日本人の私たちは見逃してはなりません。大した情報ではなくても、それを売買して金儲けができることは明らかなのですから。