おとなのふりかけ考

 テレビなどのCMで見たことがあると思いますが、永谷園の『おとなのふりかけ』は、大人も子供もどの世代にも支持されるロングセラー商品です。永谷園のホームページ「おとなのふりかけ裏話 知られざる開発秘話」によると、次のようなことが書かれていました。これまでの消費者データによると「ふりかけ=子供商品」というイメージがあったことがわかりました。その思い込みへの挑戦が、この商品への開発につながったそうなのです。「子供だけでなく大人も満足できるふりかけ」というテーマでちょっと贅沢な品質とイメージの商品をデビューさせました。特にCMでは、「子供の目から見た大人の世界を描く」というコンセプトで制作されました。

 このCMを覚えている人がいるかどうかは知りませんが、「大人って、…ずるい。」というような文句が、子供の側から発せられたと、確か私は記憶しています。『おとなのふりかけ』は、大人向けの、大人にしかわからない世界の中で食べられ、楽しまれる食べ物に、子供の側からは見えた。ということです。大人は、それを子供に隠すしか手はないのですが、それはそれでいいと私は思います。子供に「大人はずるい。」と思われても、それは「かわいそう」に当たりません。それは、虐待でも差別でもありません。それは、『大人の世界へのあこがれ』の気持ちとして残ります。言い換えれば、これからの将来を生きてゆくための心の力が、子供に育ってゆくのです。

 しかも、『おとなのふりかけ』を子供が食べたら、法律で罰せられる。などということはありません。それは禁じられていないのです。子供が食べようが大人が食べようが、それは自由です。私の希望としては、そこから本当の『自由』を感じてくれる人が一人でも増えるといいなと思っています。そんなことは当たり前だと思っている人は多いと思います。けれども、『成人映画やビデオ』とか『おとなの飲み物』とか『おとなの玩具』とかを考えると、18歳未満で禁じられているものも、世の中には少なくないと思います。(もっと心配で問題なのは、それらを大人に禁じてしまうことは、大人を幼児化してしまう、という懸念があることです。)

 話を戻して、もう一つ述べておきたいことがあります。『おとなのふりかけ』を食べている大人を見て「大人って、ずるい。」と言っている子供についてです。大人は子供に見られている(あるいは、観察されている)ということです。大人がおかしなことをしていれば、それを子供に見破られるのは時間の問題です。

 人を殺しておいて「躾(しつけ)としてやった」という言いわけが、私には、「悪いことをした子供がする言いわけ」と同じに聞こえてしょうがないのです。あるいは、「体罰を行った人の厳罰化」は、本当に抑止力になりえるのか疑問な点があります。第三者や近くの人間が介入してひと言「それは良くないよ。」と、大人としてき然としていたほうが効果がありそうです。

 大人としての自信とか、大人としての資格がない、それが不安で仕方がない、という言葉をよく聞きます。大人は本当は誰だってそうなのです。そのことに共感することは悪いことではありませんが、だからといって、大人として相応(ふさわ)しくないことをして、良いわけがありません。私たち大人が気にかけていても、気にかけていなくても、子供の目は、私たち大人の姿を必ず見て育っています。